No.159 Teacher and Parental Perspectives of Barriers for Inclusive and Quality Education in Mongolia
JICA緒方研究所について
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1990年のEFAの開始以降、途上国における初等教育へのアクセスは著しい向上を遂げたが、未だ世界には5700万人の非就学児がいるとされ、その3分の1は障害児であると推計されている。1994年のサラマンカ宣言、2006年の障害者権利条約の発効等のインクルーシブ教育推進の国際潮流を背景に、途上国においても障害児の教育へのアクセス及び質の改善が試みられている。しかし、途上国において、就学している障害児はただ教室に座っているだけという、全ての子供を包摂するという理念からは程遠い現況になっているとの報告がある。
本論文は、インクルーシブ教育政策を推進するモンゴル国において、障害児が質の高い教育を享受するには何が阻害要因となっているか、学校現場である特別支援学校及び普通学校の教員、障害児の親からの評価について、実証分析を行った。
まず、記述統計における分析では、阻害要因に関する質問のうち、特別支援学校及び普通学校の教員、障害児の親の双方が、設備の未整備や学校の予算・教員の特別手当等の不足等が、障害児の就学にとって高い障壁であると捉えていることが分かった。更に、教員側は、学習成果のモニタリング方法、教員の研修不足などが高い阻害要因であると考えていることも確認された。また、特別支援学校の教員及び親の双方が、地域の理解不足についても、高い阻害要因となっていると認識していることが分かった。
これらの項目について因子分析を行い、学校の予算、設備、教員の特別手当、通学への補助金の不足を含む金銭・物資因子、教員の経験、教員養成・現職教員研修等の不足を含む教員研修因子、クラスメイト、親、教員の理解不足を含む理解因子の3つの因子にまとめ、分散分析を行った。被験者内要因分析では、特別支援学校及び普通学校の教員、障害児の親の全グループが、金銭・物資不足、教員研修不足、理解不足の順に高い障壁であると捉えていることが分かった。被験者間要因分析においては、普通学校の親は、金銭・物資不足を、教員より、有意により困難な課題であると認識していることが分かった。教員研修不足については、普通学校の教員及び親が、特別支援学校の場合より有意により困難な課題として捉えていることが確認された。更に、理解不足においては、4グループにばらつきがあり、通常学校の教員は他集団より有意な差でより困難な課題と認識していることが確認された一方、特別支援学校の児童の親はこのような認識が有意に低い状況であることが確認された。
キーワード : 質の高い教育、インクルーシブ教育、障害、認知、保護者、教員、モンゴル
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