【関西発!SDGsビジネス事例】マラリアから人々を守る ~関西ペイント株式会社~

JICA 2016年度 民間技術普及促進事業に採択され、ザンビアで「感染症対策塗料普及促進事業」を実施。

【写真】忽那寿一さん、永野裕幸さん関西ペイント株式会社 
忽那寿一さん、永野裕幸さん

蚊を寄せつけない画期的な塗料「アンチ・モスキート・ペイント」

アンチ・モスキート・ペイント

関西ペイント株式会社は大阪に本社を置く大手塗料会社です。創業から100年以上の歴史を持つ塗料のエキスパートで、近年では売上の6割以上が海外でのビジネスというグローバル企業です。同社は蚊が嫌う有効成分を配合した防蚊塗料である「カンサイ・アンチ・モスキート・ペイント」を開発し、アフリカで注目を集めています。

アフリカで大好評!「20~30匹いた蚊が今は1~2匹に」 

塗るだけで蚊を予防

世界では、1年に推定2億人以上がマラリアにかかっていると言われており(WHO調べ、2017年)、多くの人びとを苦しめています。マラリア原虫を持った蚊に刺されることで感染する病気のため、蚊に刺されないことが一番の予防法ですが、アフリカの多くの地域では建物の中に蚊が入ってきてしまうため蚊にさされないのは至難の業です。この状況をなんとかしたいと考えた関西ペイントは、JICAの民間技術普及促進事業を活用し、ザンビア共和国でアンチ・モスキート・ペイント(AMP)の普及活動を開始。年間550万人(人口の約33%)がマラリアに感染しているというザンビアで、5つの地区の400軒の民家を対象に試験塗装と効果の実証実験を行いました。
AMPは殺虫効果をもたらす成分を含んでいるため、塗料を塗った壁には蚊が近寄りません。実験の結果「これまでマラリアに2回感染したことがあるが、9か月前に家を塗装してからはかかっていない」「室内に20~30匹いた蚊が今は1~2匹に減った」と住民の方達から喜びのコメントが出るような成果があがりました。

アフリカビジネス成功のカギ

ザンビアの親子

実証実験後、関西ペイントは2018年からザンビアでアンチ・モスキート・ペイントの販売を開始。現在はウガンダなどでも販売し、1か月に10トンもの売上となっているそうです。
最後の成長市場としてアフリカが注目される一方、アフリカビジネスで成功する日本企業はまだまだ少ないのが現状です。関西ペイント社が成功した経緯について、担当者の忽那さんと永野さんにお話を伺いました。ポイントは「①販売網の確保 ②ブランド力 ③政府との関係」です。
【販売網の確保】アフリカでの販路を確立するため、ケニアと南アフリカの塗料会社を買収。買収した企業の流通網・販路や現地市場の知見を活用し、ウガンダではなんと国内シェア6割を実現しました。商習慣や文化が日本と大きく異なるアフリカで日本人がビジネスを行ううえでは、一から販路を作り上げていくよりも、現地事情をよく知る信頼できるパートナーの確保が重要なのかもしれません。
【ブランド力】アフリカ人はブランドやメーカー名を重視して選ぶことが多い、という考えから、買収した企業「プラスコン」がアフリカで持っていたブランド力を活かすため、現地法人は「カンサイプラスコン」という社名に。これが現地での認知度アップに役立ちました。
【政府との関係】さらにカギとなったのは「現地政府との関係構築」です。現地で今回の防蚊塗料を販売するには政府の認可が必要でしたが、認可取得に時間がかかりなかなか販売が開始できませんでした。JICAの事業に採択されたことがきっかけで政府との信頼関係を構築することができ、政府のキーパーソンとの関係構築にも力を入れたところ、見事認可が取得でき販売を開始することができました。

「アフリカの子供達を救う」という気持ちが原動力に

現地調査での忽那さん(左)と永野さん(中央)

今回のアフリカでのビジネスの苦労について、忽那さんからひと言頂きました。「とにもかくにも一番は言語問題。ザンビア人は皆さん流暢な英語をしゃべります。中途半端な英語ではコミュニケーションも中途半端になります。次にビジネス文化の違い、アジア極東の日本と遠いアフリカの国の文化、生活習慣は大きく違います。アフリカの子供達を救うという強くブレない気持ちを持続できたことが、この事業成功の秘訣です。」
さまざまな苦労話を笑顔で語る忽那さんと永野さんの明るさも、今回の成功の背景にあるのかもしれません。

【画像】SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」では、「3.3 2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する。」というターゲットが設定されています。

JICAは、民間企業のみなさまが持つ製品・技術と連携し、SDGs達成に向け活動しています。