「地域有識者懇談会」(第2回会合)開催概要

1.日時

2016年6月1日(水)15:00〜17:10

2.場所

JICA北海道(帯広)会議室

3.出席者

  • 委員:前田正明委員、川田章博委員、奥田潔委員
  • JICA外部からの参加者:駒野裕之 株式会社とかち製菓 代表取締役、滝沢仁 帯広市市民活動部 親善交流課 課長、西島新一 同課 課長補佐、中野昌明 帯広畜産大学 企画国際室参事役/室長
  • JICA:加藤宏理事、松島正明JICA北海道所長、遠藤浩昭JICA北海道(帯広)代表、飯田次郎副代表、長澤秀行地域連携アドバイザー、福島ひろ美課長補佐、菅原清英課長補佐、佐藤恭之課長補佐

4.議事概要

JICAから、JICA北海道(帯広)が設立され20年経過し、当時から国内機関と地域との関わりが変化し、一層の地域貢献が求められている中での、JICAを取り巻く状況、JICA北海道(帯広)の2015年度事業実績や今後の取組みについて報告した。また、JICA事業が地域活性化に貢献した事例として、とかち製菓の駒野代表取締役から、草の根技術協力への参画により海外ビジネス展開が実現された事例をお話しいただいた。その後、引き続き意見交換が行われた。主なご意見は以下のとおり。

(1)地方創生におけるJICAの役割

(委員)

  • 地方創生は大きな柱であり、各地域で知恵比べが求められている。いかに地域の資源、特性、歴史を活用するかがポイント。これまでセンターが20年で蓄積してきたことがベースになって、これからの地方創生の展開につながるのは楽しみ。
  • 帯広市は地方創生に関して、昨今二つのことに取り組んでいる。一つは、とかち製菓のような創業・起業をいかにこの地に起こしていくか、もう一つは、十勝を中心とした広域観光をいかに活性化していくかである。広域観光に関しては、全国で7ヶ所認定された広域観光周遊ルートの一つに東北海道が認定されており、十勝のDMO(注)立ち上げを含め、これから4年間でしっかりとした広域の観光ルートを設定していくところ。今後、高速道路の整備や空港へのアクセスが良くなることから、4つの国立公園/国定公園の活用を含め、広域観光がますます重要になると考えている。JICAとはこうした観光や自然管理の研修コースなどにおいて一緒にできることがあると思う。
  • 内閣府の「地方創生加速化交付金」など、地方創生にかかる資金を効果的に活用するためには、十勝管内の町村に加え、商工会議所やJICAと連携することが大切。十勝は、関係機関の関係性のお互いの距離感が非常にいい。連携が取りやすいことはアドバンテージだと思う。段階を踏みながら連携と輪を広げていきたい。

注)Destination Management/Marketing Organization(地域の観光のマネジメントとマーケティングを一体的に担う組織)

(JICA)

  • 昨年2月に開発協力大綱ができて、途上国と同時に日本を元気にするための国際協力に再定義された。今後は地方創生や、中小企業海外展開事業、大学の国際化にJICAを活用いただきたい。
  • 帰国ボランティアへの民間企業からの求人が増加している。国際感覚・チャレンジ精神豊かなグローバル人材を、帰国後、自治体や教育現場、企業に採用いただき、地方創生に貢献していきたい。

(2)研修員受入事業

(委員)

  • 自国の課題解決のために問題意識を持って、国と地方の行政の関係等に関心がある研修員も多い。研修の中で、横断的なパッケージで地域の社会システムを学んでもらうことで、途上国の社会システムと結び付けることができるかもしれない。
  • 研修事業のフォローアップとして、帰国研修員が実際に役に立ったことや、課題点を聞き、プログラムに反映する仕組みを作るため、帰国後10年後に再度来日するようなホームカミング制度を導入してはどうか。研修員に帰属意識もでき、帰国後要人になった研修員が、再び帯広を訪れることは、研修を提供する側にとっても非常に意味のあることだと思う。最近では、多くの国立大学でもホームカミング制度を導入し、組織を強固なものにしている。
  • 研修員の中には、研修コースに付随して、野生動物の管理等に興味を示した方がいた。帯広市動物園は帯広畜産大学との連携協定を締結しており、今後、野生動物の管理、保護、展示等の拠点施設的な役割を担っていけないかと考えている。他の道内の動物園(釧路、旭川、札幌)と連携し、野生動物の管理、専門獣医師の養成といったテーマで貢献できると思う。

(JICA)

  • 今年度は、研修事業を通じて地域のベネフィットに貢献するため、1)民間企業から研修に参加できる機会の拡大、地元企業の皆さんと研修員とのビジネスマッチングの機会提供、2)地域ならではのリソースを活かした研修立ち上げ、3)途上国から来る研修員と受け入れる地域の機関双方のメリットをより強く持つため、“Knowledge Co-Creation Program”となるための一層の工夫、に取り組む。
  • 在外事務所を通じての帰国後の定期的なフォローについては重要であり、今後の課題。これまで60年間で50万人(北海道14,000人)の研修員が来ているが、帰国後、閣僚になっている事例もあり、リストをアップデートしているところ。また、帰国後も継続的に連絡が取れるように、JICAメールアドレスを供与している。招へい制度という制度を活用し、帰国研修員を短期間招へいすることは可能と考える。
  • 研修員は日本の社会システムや日本人の勤勉さを非常に印象深く感じ取っている。技術を習得する研修とともに、日本理解を深めてもらい、それを帰国後どう活用できるかを考えることも重要。また、大学にとっては戦略的に次の留学生につなげたり、企業にとっても複数社の連携で次の展開につなげるなど、戦略的に研修員受入を地域の活性化につなげることも可能である。

(3)市民参加協力事業、その他

(委員)

  • 国際理解教育事業について、地域に即した取り組みをするべき。学校との連携協定締結やモデル校の設定により、連携する学校や学年を絞り、長く実施することで、フィードバックを得ることができる。以前、若葉小学校が実施したフィジーの小学校とのテレビ会議を活用しての交流はJICAにしかできないので非常に良い取り組み。館内展示改善について、世界各国からおもちゃを集めて手に取って遊べるような展示も子どもたちの関心を引くだろう。
  • 設立から20年間経ったことに感慨を受けるとともに、帯広にJICAがあることに大きな意味があると感じている。この先20年、50年とJICAと一緒に地域を盛り上げていきたい。
  • 中小企業の海外展開支援について、JICAがコーディネーターとなって後押しいただけると、企業にとって活用しやすく参画する企業も増えると思うので、今後、他省や他機関への橋渡しをお願いしたい。
  • 地域有識者とJICAが意見交換するのは非常に有意義で今後も継続すべき。さまざまなご意見を多方面から取り込み、また新たなパートナーの発掘にも努め、JICAが地域に貢献できることを引き続き探ることが大切である。

(JICA)

  • 国際理解教育支援事業の学校現場での更なる活用を促すために、教育行政への働きかけを積極的に行い連携強化を図っている。また、今年度中に館内展示充実を図り、市民や生徒/児童がセンターに訪問する機会を増やしたいと考えており、会議室、食堂、居室などセンター施設の更なる活用も図っていく。