【草の根技術協力】キルギス共和国 草の根パートナー型事業の成果報告会が開催されました!

JICA北海道(帯広)では実施団体による草の根技術協力事業の成果報告会を開催しています。1月23日に開催された報告会には総勢14名が参加し、活発な質疑応答が行われました。報告会の概要をご報告します。

2020年1月28日

実施団体からの活動報告

竹内氏より、これまでのキルギスでの取り組みについて報告がありました

プロジェクトマネージャーの西崎氏

成果報告会の様子

今回の成果報告会では、2016年7月から2020年1月まで実施された、キルギス共和国「有機農業の普及拡大と有機農産物の高付加価値化プロジェクト」の実施団体であるバイオマスリサーチ株式会社より、本事業の活動実績や成果について報告がありました。

1991年の旧ソ連崩壊後、集団農場制度が崩壊し、農地の私有化・小農化が進められたものの、行政サービスの機能低下によって、農家は技術支援や化学肥料といった農業資材の配給など、営農支援を受けることができなくなりました。国内には化学肥料の製造工場が無く、化学肥料はロシアやウズベキスタンなどの周辺国から輸入せざるを得ないものの、流通量は少なく、価格も高騰していることから、多くの農家は必要量を入手できていません。その結果、土壌肥沃度の低下を引き起こし、農産物の収量や品質は著しく低下、農家の生活は困窮するものとなっていました。

そこでバイオマスリサーチ株式会社は、農家が入手し易い肥料として、有機肥料の技術指導を行う草の根技術協力事業を2013年に開始、第2期となる本事業では、前事業で農作物への効果が確認された有機農業技術をより広く拡大させるため、技術指導と有機農産物の付加価値化支援を行ってきました。農業大学や、地域の職業訓練校とも連携し、4年間のプロジェクトで744人が有機肥料セミナーを受講しました。効果の面からもコストの面からも良い有機肥料を作り使用することで、作物の品質や収量が向上し、複数の農家で卸単価を向上させることができました。
また、上記のほかに有機農業に取り組むようになった農家数が増加したことや、栽培試験を担当した農業大学の教授から「化学肥料と比べて有機肥料は価格を抑えられ、かつ環境にも優しく、本事業の取り組みはキルギス農業の将来に夢を与えるものだ」と評価されています。

2019年12月にキルギスで有機農業推進法が成立し、有機農業を実施する農家への支援や有機農産物の認証制度の整備が進められています。ますます変化する環境の中で、本事業の貢献はキルギスの成長の後押しとなるものではないでしょうか。

ロシアでの有機農産物の市場調査報告

マーケット内に農産物の窒素量を計測できる検査室があります

ココナッツの裏にあるラベルには、認証のマークがついています

消費者の健康志向の高いロシアは、キルギスにとって付加価値のある有機農産物を輸出するターゲット市場であり、本事業では2度にわたり市場調査を実施。2019年10月に行われた調査について、島畑氏よりロシアのマーケットの様子や、有機農産物の取り扱いについて報告がありました。
マーケットでは顧客が希望すれば店舗で農産物の窒素量を計測できるサービスがあったり、一部のスーパーマーケットでは有機農産物の特設コーナーを設けたり、有機農産物だとわかるよう店独自でPOPを作ったりと、有機農産物の推進に取り組んでいる店舗もありました。

ロシアもキルギス同様に有機農産物の認証制度は無く、欧州の認証制度を参照してきましたが、ロシアでも有機農業推進法案が可決、今月発効されます。「有機」の定義が幅広いことなどを理由に、具体的な動きにはまだ時間を要するといった声もあるようですが、ロシアでは外国製品の取り扱いも多いことから、ロシアが求める基準を通れば、キルギスの有機農産物も流通できる環境にあることはキルギスの有機農業にとって追い風となりそうです。

キルギス有機農業の展望と質疑応答

質疑応答の様子

有機農産物を購入したいと思っている人はいるが、その人まで情報が届きにくいことから、有機農産物の流通には情報発信が大事とお話いただきました。
実際にオーガニック専門店では、SNSを使って情報発信をし、ウェブサイトで商品を販売していたとの報告もありました。
キルギス国内でも積極的な情報発信をしている団体がありますが、より効果的な情報発信が、キルギスで生産された有機農産物の販路拡大の一助になるかもしれません。
報告会最後の質疑応答でも、キルギスの認証制度の整備状況や周辺国の有機農産物の差別化の必要性について、参加者からのコメントや意見交換が行われ、4年間の事業を総括する充実した報告会となりました。