【JICA開発大学院連携】長期研修員を対象に地域理解プログラムを実施しました!

2023年3月15日

JICAでは、開発途上国で将来の国の発展を担うリーダーとなる行政官・技官らを長期研修員(留学生)として日本に受け入れ、技術・知識の習得や大学院での学位取得を支援するかたわら、日本の地域が発展するまでに辿った歴史・経験も学んでもらい、日本理解の促進や自国の発展に役立ててもらう「地域理解プログラム」を提供しています。

北海道センター(帯広)では、今年度は10月と3月の2回にわたり、帯広畜産大学、北見工業大学、北海道大学で学ぶ長期研修員を対象に北海道の発展に関わる歴史や資源、文化、産業を学ぶプログラムを実施しました。

アイヌ文化に学ぶ-釧路の発展と自然共存の歴史-

釧路市博物館を見学する研修員

阿寒湖畔にて全員で集合写真!

2022年10月15日(土)、10月16日(日)の2日間、長期研修員17名を対象に、釧路地方の阿寒湖や釧路湿原等を舞台に、プログラムを実施しました。

【釧路湿原・地域の発展の歴史】
元・釧路国際ウェットランドセンター事務局長の菊地義勝氏を講師に迎え、釧路地方の開拓の歴史と自然環境の特徴、釧路湿原の形成過程、湿原保全の取組、自然との共生を大切にするアイヌ社会の在り方等について、本州とは異なる北海道特有の事情も交えながら講義をしていただきました。

【阿寒湖オンネチセ・アイヌコタン視察】
伝統文化を受け継ぐアイヌ民族が多く居住し、その文化を伝える阿寒湖アイヌコタンを訪れ、釧路市アイヌ文化伝承創造館「オンネチセ」で、アイヌが使っていた狩猟道具や生活用品の展示を見学しました。
狩りの前のカムイノミ(神への祈り)、「必要な分だけを捕らせて頂く」、「天から与えられるものに無駄なものは何一つない」等、自然と共生する伝統的な考え方は、現代社会においても再評価されています。
その後、アイヌ民族の伝統的な楽器「ムックリ」(口琴)づくりと演奏の体験を行ったほか、研修員は母国の少数民族の文化とアイヌ文化との類似点について議論したり、ガイドの方が行うアイヌの挨拶の方法を真似しながら講義を聞いたりと、非常に関心を持って学びを深める様子がうかがえました。

【釧路市博物館見学】
学芸員の方々に解説いただきながら、釧路湿原の生態系、釧路地域の発展の歴史を学んだほか、「オンネチセ」でも見学したアイヌ民族の衣装や工芸品を見ることができ、アイヌ文化への理解をより深める機会となりました。

【釧路湿原視察】
温根内ビジターセンターでは、湿原内の木道を歩きながら、湿原内の動植物の生態、保全の取組等について、解説員にご説明いただきました。市立博物館で展示されていたエゾシカやヤチボウズ(スゲ類の株)などを実際に観察でき、学びがさらに深まる機会となりました。
最後に、釧路市湿原展望台で、広大な湿原や釧路市街地を眺めた上で、講師の菊地氏のラップアップ、参加者より代表挨拶を行い、充実したプログラムとなりました。帰路の車窓からは、偶然にも特別天然記念物のタンチョウが! プログラムの締めくくりに、長期研修員のみなさんから歓喜の声が沸く瞬間となりました。

参加者からは、「独自の生態系や文化を学ぶことができ大変有意義だった」「アイヌの『自然と共に生きる』という生活様式は、今日の世界にとっても重要だと感じた」という声が聞かれました。

十勝の自然環境活用事例~ジオパークと然別湖コタンに学ぶ

とかち鹿追ジオパーク・ビジターセンターにて十勝平野の形成過程について模型で説明を受けている様子

然別湖コタンの足湯で記念撮影

2023年3月1日(水)、長期研修員16名を対象に、十勝地方の鹿追町や然別湖でプログラムを実施しました。

今回のプログラムでは、十勝地方の豊かな自然環境を活用した地域振興の事例について学んでもらうため、とかち鹿追ジオパーク・ビジターセンターと然別湖ネイチャーセンターを訪問しました。

最初に訪問した「とかち鹿追ジオパーク・ビジターセンター」では、十勝地方の地形の成り立ちや土壌の特徴、寒冷地ならではの自然環境や生態系についてセンター内の展示の説明を交えてご説明いただき、研修員は特に火山活動によって現在の然別の自然や大地がどのように形成されたかを学びました。鹿追・然別湖の珍しい地形、土壌の特徴、火山については研修員の関心も高く、積極的に質問して学びを深めていました。

次に訪問した然別湖ネイチャーセンターでは、自然が作り出した然別湖を活用し観光地化することで、地元の人々がどのように地域振興を試みているかを学びました。寒冷地の特徴である「凍(しば)れ」を活用し、凍結した湖上で営まれる然別湖コタンはボランティアが中心となり作り上げているという説明があり、透明な氷は湖から切り出したものであることを聞くと、研修員から水と雪と氷でどのように大きな建物を制作するのかと質問があり、手作業での制作方法に驚きの声が上がっていました。

その後、研修員たちは凍結した湖上にて、湖の氷をドーム状に築いたイグルーや足湯を体験しました。

参加者からは「十勝地方の自然資源や発展について学ぶ素晴らしい機会となった。」「どのように地元の人々が自然を活かしたアクティビティを考案したのかが知ることができた。」「観光促進のため氷などを使った自然資源の活用、何もない所から何かを作り出そうとする日本人の力強さが印象に残った。」などの声が聞かれました。

プログラム中、研修員は積極的に質問し、お互いの国の文化についても活発に意見交換する様子が見られました。
帰国後、本プログラムや留学中に得た学びを糧に、知日派・親日派のリーダーとして自国の発展に寄与してくれることを願っています。