北岡理事長が東京大学で開催された科学技術イノベーション(STI)のイベントに登壇

2017年12月14日

北岡伸一JICA理事長は12月14日、東京大学で開催された科学技術イノベーション(Science, Technology and Innovation; STI)にかかるフォーラムに登壇しました。

【画像】北岡理事長は、東京大学五神真総長、世界銀行ジム・ヨン・キム総裁とともに、東京大学の福武ホールで開催された「科学技術イノベーションを通じたSDGs推進の新常識」と題したフォーラムに参加し、基調講演しました。そこでは、7月に改定したJICAのビジョンを紹介し、アクションに含めている革新(Innovation)、共創(Co-creation)、現場(Gemba)を引きあいに、JICAが考えるSTIを活かした開発への取り組みについて、紹介しました。講演では、JICAの役割として、日本と世界をつなぎ、STIを通じて、日本と世界でより良い社会を創ることについて、JICAの複数の案件を交えながら、紹介し、イノベーションを生み出す社会には、1)知的探求と自由闊達な議論、2)それを受け入れる社会の柔軟性、3)異質なものとの出会い、の3つの条件があると述べました。また、STIの重要性と合わせてJICAとして大切にしているものとして、「目標を全員で共有すること」を挙げ、「カイゼン」を事例に紹介しました。SDGsのキーワードでもある包摂性(Inclusive)と「カイゼン」の精神は大きく関係しており、またこの「目標を全員で共有すること」からトヨタをはじめとした民間企業が様々なイノベーションを起こしてきたと述べました。

北岡理事長は最後に「技術のみで明るい未来を創ることはできない、JICAは技術やイノベーションの促進のために、現場でいろんな人と接し、共有しながら、また大学をはじめパートナーとの関係を大切に、国際協力を続けていきたい。」と締めくくりました。

【画像】東京大学の五神総長は、日本政府が取り組むSociety 5.0及びSDGsを紹介し、それらのけん引力として、1960年代の多摩川の水質汚染とそれを克服した事例や、アメリカの大気汚染を解決するために制定されたマスキー法に対して、日本の自動車業界は努力して新型エンジンを開発したことを事例にSTIを社会課題の解決に生かすことの重要性を述べられました。合わせて、課題解決には、1)科学技術イノベーション、2)社会システム、3)経済メカニズムの3者を適切に設計することが重要であると強調されました。

【画像】世銀キム総裁は、世銀の目標である貧困の撲滅と繁栄の共有の促進に向けて、1)包括的かつ持続可能な経済成長の加速、2)人的資本への投資、3)グローバルな脅威へのレジリエンスを強化することを手段としていくと述べました。特に人的資本については、低所得国と高所得国を比較して、人的資本への投資と経済成長の間に強い相関があることを述べ、人的資本への投資の重要性を強調しました。

また、国谷裕子キャスターと行ったディスカッションにおいても、引き続き人的資本への投資を強調し、フロアから道路や電力等のインフラへの投資の必要性について質問が出た際には、インフラへの投資は、民間資金を動員することで進め、限られた世銀の公共投資を人的資源への投資に配分していくと回答しました。また、気候変動について、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換は想像以上の速度で進んでおり、化石燃料への投資は時代遅れになりつつあると述べていた。

イベントの前に打ち合わせをする参加者。
左から、北岡JICA理事長、五神東大総長、キム世銀総裁、国谷キャスター