2013年 職員向け年頭メッセージ

【画像】昨年4月の理事長就任以来、「元気の出る国際協力」(注1)を、と申し上げてきました。世界を元気にすることで日本も元気にする、この心意気は今年も変わらずに維持していきます。そのため、今年は「強いJICA」を作る、という方針でいきたいと思います。強い人材から成る、強い組織を作りたいと思います。

なぜ「強いJICA」を作らなければならないのでしょうか。

世界はダイナミックに変化しており、強くなければ、ダイナミックな変化に飲み込まれてしまいます。今まで以上に"プロアクティブ"になる(能動的、積極的に行動を起こす、対応を行う)ことが重要です。
旧来の「南北問題」的発想では、国際協力を効果的に行うことはできません。開発途上国の状況も、日本との関係も、地域や国によって異なります。技術協力、有償資金協力(円借款、海外投融資)、無償資金協力、ボランティア、緊急援助など、JICAが持つ協力手法をどのように組み合わせるかも、国や地域によって異なります。国毎の政治・経済・社会分析、支援戦略策定を的確に行い、地域戦略の下、適切な解決策(ソリューション)を提示していく必要があります。

国際協力はJICAのみでは行えません。今後はますます、関係者・パートナーとの連携を強めていく必要があります。昨年から本格化した民間連携ボランティア制度や中小企業海外展開支援を含む、民間連携強化の取り組みは、まさにこの傾向を示しています。様々な関係者やパートナーとの連携は、JICAが効果的なリーダーシップを取って行く必要があります。

2013年は、世界的な国際協力の潮流が様々な場で議論される年です。国連のミレニアム開発目標における「ポスト2015」(注2)をめざす議論は大詰めを迎えます。日本主催のTICAD V(第5回アフリカ開発会議)が6月に横浜で行われ、また、日・ASEAN友好協力40周年(注3)という年でもあります。世界的な議論を積極的にリードしていきたいと思います。

こうしたことに応えていくためにはJICAが強くなければなりません。

昨年4月以降、様々な事業、仕事を学び、経験してきました。その結果、私は、JICAは強くならなければならず、強くなる条件は十分あると思うようになりました。

第一に、世界各地での実績があります。各地を出張して、高い評価を得ている事業が数多くあることを確認しました。第二に、JICAが持つ協力手法の効果的な組み合わせについて、既に良い事例が生まれています。第三に、世界の国際協力の議論をリードする知的発信力も向上してきています。日本で昨秋開催されたIMF・世界銀行総会でのJICAによる知的貢献は、それを示していたと思います。

強化が必要な課題もJICAには残されています。
第一に、戦略性の強化です。ソリューション・プロバイダー(途上国が抱える課題に対し適切な解決方法を提供する組織)として、現場ニーズに合致した、戦略性の高い支援を効果的に実施する体制にしたいと思います。
第二に、ナレッジ(知見)の集積です。組織内における実践的なナレッジを蓄積するため、新たな開発課題への対応力や発信力を強化したいと思います。
第三に、民間連携のための更なる体制整備です。政府、経済界からも期待が高い、海外投融資などを進めるため、民間連携部門の強化を早急に進めたいと思います。

これらは組織を強くするための方針です。しかし、「強い人材」がいなければ、組織をどのように変えても組織全体は「強く」なりません。
世界有数の包括的な開発援助機関となったJICAのプロフェッショナルとして、職員は、上述した相互に関連する3つの期待全てに応えられるよう、考え行動することが重要です。
JICAにとっての人材は職員のみに留まりません。JICAのパートナー・関係者たる、コンサルタントを始めとする民間企業、専門家やボランティア、NPO/NGOなどの市民社会、地方自治体、大学の方々にもまた「強く」なって頂く必要があります。そのためには、職員がパートナー・関係者から十分に信頼を勝ち得ていなければなりません。そうした方々との関係強化も図っていきたいと思います。

以上、新年にあたり、「元気の出る国際協力」を進めるため「強いJICA」を作る、ということを申し上げました。「強いJICA」とは、プロアクティブにソリューションを途上国に提供できる、筋肉質で、強い職員から成る組織です。理事長としても、改革の先頭にたち、世界全体を視野にいれた戦略作成をリードし、国際的な発信を進める、強い理事長でありたいと思っています。

国際協力機構(JICA)
理事長 田中 明彦

(注1)田中理事長が日本記者クラブで会見−「元気の出る援助」とは何か−をご参照ください。
(注2)「ミレニアム開発目標」(PDF/905KB)をご参照ください。
(注3)日・ASEAN友好協力40周年(外務省ホームページ)をご参照ください。