田中理事長が国連総会ハイレベルウィークの会合に出席

−保健、飢餓対策の継続と、開発成果の発現をより確かにするアプローチの重要性を強調−

2013年9月27日

田中明彦JICA理事長は、2013年9月23日から26日までの4日間、第68回国連総会の開会に併せて催される各種会合に参加するため、米国ニューヨークを訪問しました。

国連本部。第68回国連総会は「2015年以降の開発アジェンダの準備」をテーマとしている

理事長は、24日の午前に国連開発計画(UNDP)と世界銀行が主催するミレニアム開発目標(MDGs)の残された課題について議論する会合に出席しました。UNDPクラーク総裁と世界銀行キム総裁の議事の下、各国首脳、要人と共に登壇した理事長は、目標達成が遅れている分野として保健や飢餓対策などを挙げ、これまでの支援アプローチを検証し、必要な見直しを行った上、さらなる対策が必要であること、グローバリゼーションの進展の中で、人間中心で持続可能な開発を促すために「人間の安全保障」の概念が有効であることを指摘しました。また、「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」(注1)の実現に例えられる包摂的な開発や、開発成果の蓄積を瞬時に損なう外的ショックに対する社会の強靭性(レジリアンス)の強化と、その一環としての防災主流化など、現MDGsで、必ずしも十分に考慮されていない開発の質的側面の向上に、取り組む必要があることを強調しました。

本会合では、今後、国連を中心とした国際社会は協力して、現在未達成の課題への取り組みを加速し、格差への対応やショックへの強靭性に取り組むべく、2015年以降の新たな課題の議論をさらに継続すべきとの共通認識が生まれました。

JICAはアフリカ諸国の農業発展に向けた努力を支援し続けることを約束

26日には、本年6月に成功裏に終了した第5回アフリカ開発会議(TICAD V)(注2)を踏まえ、安倍首相が主催した、持続可能なアフリカの農業開発に関する会合に出席しました。参加したアフリカの地域経済共同体(RECs:Regional Economic Community)の各議長国代表に対し、理事長は小規模農家の自給的農業から市場志向型農業への移行支援、アフリカにおける稲作の振興などの具体例を紹介しながら、アフリカの経済成長の原動力である農業発展に向けたアフリカ諸国の努力を、JICAはこれからも支援し続けると述べました。

各議長国代表からも、アフリカ農業開発のポテンシャルとともに、JICAへの高い期待が表明され、TICAD Vの合意に基づく包括的な農業開発を推進することが確認されました。

なお、理事長は、23日に開催された、サブサハラ・アフリカにおいて今後10年間に5,000万人が貧困から抜け出すことを目的とする、G8のイニシアチブ「食料安全保障および栄養のためのニュー・アライアンス」のリーダーシップ理事会(注3)にも参加し、同分野における日本の積極的な貢献について説明しています。


(注1)「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」(UHC)とは、すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられることを指す。UHCの実現は、2012年12月の国連総会で国際社会の新たな共通目標として決議されている。日本政府は、自国の優れた医療保障制度の実績に基づき、2013年6月に表明した「国際保健外交戦略」の中で、UHC実現に向けた支援を柱として掲げたほか、2013年6月の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)で、アフリカにおけるUHCへの貢献を打ち出している。
(注2)アフリカの開発をテーマとする国際会議で、1993年以降、日本政府が主導しアフリカ連合委員会(AUC)、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行と共同で開催している。5回目となるTICAD Vは2013年6月1日から3日にかけて横浜で開催された。
(注3)同理事会は、G8に加え、アフリカ連合委員会(AUC)および世界経済フォーラム(WEF)の共催。昨年の国連総会時に開催された第1回、本年5月に南アフリカ共和国で開催された第2回に続き、今回が3回目の開催。理事長は第2回目に続いての参加。