田中理事長がエルサルバドルを訪問

2014年8月25日

セレン大統領(左)との会談の様子

田中明彦JICA理事長は、8月19日から22日にかけて中米のエルサルバドルを訪問し、サンチェス・セレン大統領をはじめ同国政府要人などとの意見交換や、JICAが支援するプロジェクトの視察を行いました。また、エルサルバドルでは13年ぶりとなる円借款「サンミゲル市バイパス建設事業(San Miguel Bypass Construction Project)」について、借款契約(Loan Agreement)の署名を行いました。

20日、田中理事長はマルティネス公共事業・運輸・住宅・都市開発大臣と会談を行い、防災・気候変動対策分野や物流インフラなどに関するニーズを確認するとともに、これまでの協力の成果を生かした広域協力の可能性について意見交換を行いました。その後、実施中の技術協力「公共インフラ強化のための気候変動・リスク管理戦略局支援プロジェクト(通称:GENSAIプロジェクト)」の対象となっている現場を視察しました。この現場は、同国の主要幹線道路である国道1号線(パンアメリカンハイウェイ)沿いで、2013年4月の地滑りにより一部車線が通行止めになった場所であり、「GENSAIプロジェクト」で地滑り防止対策を行っています。これらの意見交換および視察を通じ、エルサルバドルの経済開発に貢献する、災害に強い公共インフラ整備の重要性および日本の技術の有効性を確認しました。

同日午後、田中理事長はセレン大統領を表敬し、今年6月に成立した現政権の開発計画の策定状況を確認しました。特に、選挙公約中の戦略「経済成長と雇用創出のための公共事業投資」とわが国の対エルサルバドル協力の重点分野「経済の活性化と雇用拡大」の双方を踏まえ、JICAとしては「東部地域開発プログラム」として、雇用の拡大に直接貢献するような協力を進めていく旨を表明しました。また、同大統領は続く円借款「サンミゲル市バイパス建設事業」の借款契約署名式にも出席し、わが国協力に対する謝意を述べるとともに、本借款事業がエルサルバドルの交通輸送能力増強および経済発展に大きく貢献するものであることを強調しました。

「シウダー・ムヘール」で女性の自立支援のための料理講座を視察

翌21日には、田中理事長は西部サンタアナ市に位置する女性支援施設「シウダー・ムヘール(女性の街)」を訪問しました。9月に東京で開催される「女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム」にラテンアメリカ代表の一人として参加するバンダ・ピニャト大統領府社会包摂庁長官からは、エルサルバドルにおける女性の経済活動・雇用機会の拡大、社会包摂のための施策と、シウダー・ムヘールでの女性に対する行政のワンストップサービスのインパクトについて説明がありました。田中理事長は、女性の尊厳を回復させるための各種行政機関を活用した革新的な取り組みを高く評価するとともに、JICAとしての支援の可能性を検討していく旨を表明しました。

交番勤務の警察官から地域警察の取り組みについて説明を受ける

続いて、田中理事長は、中部ケツァルテペケ市を訪れ、同市のサンホアキン地区に今年4月にJICAの協力で建設された交番を視察しました。国家文民警察長官からは、ブラジルとの三角協力に基づいてJICAが実施してきた地域警察分野の協力が、着実に国内各地に普及して地域の警察活動が行われていること、また、現政権が、世界4位の殺人件数の多さに代表されるエルサルバドルの治安状況の改善に向けて、地域警察活動を中心的な取り組みの一つとして位置付けていることなどが紹介され、ブラジルをはじめとするパートナー国との三角協力の重要性についても再確認しました。

エルサルバドル滞在中、田中理事長は、活動中の専門家およびボランティアと意見交換し、2020年の東京オリンピック開催に向けてスポーツ分野で活動中のボランティア(卓球、柔道)の活動現場を訪問した後、22日に日本への帰途につきました。