第3回国連防災世界会議が閉幕(2)

−防災を通じた強靭な社会を目指し、JICAもさまざまな形で貢献−

2015年3月20日

国際協力機構(JICA)は、3月14日から18日にかけて、宮城県仙台市で開催された第3回国連防災世界会議(The 3rd World Conference on Disaster Risk Reduction 2015 Sendai Japan)に参加しました。さまざまな参加者との協議を行ったほか、各種会議やフォーラム、イベント・展示等では、さまざまなパートナーと協力して、日本の防災協力やJICAの活動とこれまでに得られた教訓、日本の災害と防災の教訓、今後の協力の在り方などを発信しました。

国連国際防災戦略事務局との業務協力協定の締結

UNISDRとの業務協力協定署名後に握手を交わすワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)(左)と田中JICA理事長

3月17日には、世界的な防災の取り組みを促進するため、田中理事長とマルガレータ・ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)が、JICAと国連国際防災戦略事務局(UNISDR)の間の業務協力協定に署名しました。

協定では、「仙台防災枠組」の実施、特に防災の事前投資、よりよい復興(Build Back Better)、途上国の能力開発等を推進するため、両機関が協力していくことを合意しています。

本会議における日本の教訓とJICAの防災協力の成果の発信

基調講演を行う田中理事長(「防災と国際協力シンポジウム」3月14日)

3月15日には、田中理事長は、「防災のための国際協力とグローバルパートナーシップ」をテーマとする閣僚級円卓会議に参加。防災の主流化を進めるため、防災投資拡大の重要性や、災害リスクを正しく知るための科学的根拠に基づくリスク評価の必要性を参加閣僚と共有しました。英国からは、この考えへの賛同の表明があり、ブータンからはJICAの協力に対する謝辞が述べられました。

また、「災害リスク削減の経済的側面」をテーマとしたワーキング・セッションには小寺理事が、「危機対応から強靭(じん)性の構築へ」をテーマにしたセッションには柳沢理事が、「食の安全保障と災害に強靭な農業」のセッションには北中農村開発部長がそれぞれ参加し、これまでの日本の経験やJICAの取り組みを共有しました。また、食の安全保障と障害者の防災への参画といったセッションにもJICA関係部からの参加者が貢献しました。この他、多くのセッションに、JICAがこれまで実施してきた防災協力のカウンターパートがパネリストとして参加し、JICAによる長年の防災協力の成果を示すことができました。

14日には、今後の防災協力の在り方を議論するため、JICA主催による国際シンポジウム「防災における国際協力」を開催。欧州委員会(EU)副委員長、国連開発計画(UNDP)総裁、世界銀行副総裁、そして災害多発国であり、かつ長年JICAが支援を行ってきたエルサルバドルとフィリピンから、それぞれ公共事業道路大臣と公共事業大臣がパネリストとして参加しました。シンポジウムでは、田中理事長による基調講演に続き、防災における課題と取り組み、今後の防災投資の促進や、災害を契機に、教訓を活用して災害前より強靭な社会となるような復興を行うという「Build Back Better(よりよい復興)」について意見交換を行いました。世界銀行とJICAは、援助機関による過去20年間の世界の防災協力実績額のうち、約6割を占めてきていますが、このような主要援助機関と災害の多発国の閣僚が、防災への事前投資とBuild Back Betterの重要性を確認する場となりました。

田中理事長は、17日には、外務省と国連人間の安全保障ユニットが共催する「防災と人間の安全保障」をテーマにしたパブリック・フォーラムに参加。「防災分野における人間の安全保障の付加価値」と題した基調講演を行いました。同フォーラムは、国連の高須幸雄事務次長のほか、ウズベキスタン、セルビアの国連常駐調整官、小島嶼(しょ)国連合議長などが参加し、活発な議論が行われました。

また、堂道副理事長は、民間企業やNGOなどさまざまな種類の関係者の防災への参画と日米連携をテーマとするパブリック・フォーラムをはじめ、防災における女性のリーダーシップ、東北被災地における復興を支える人材育成をテーマとする、計三つのパブリック・フォーラムに登壇し、防災の主流化、防災の行政基盤強化の重要性、多様なパートナーの参画促進、女性の防災への参画の重要性について発信しました。

幅広いパートナーと連携・協力したセミナー開催や展示

一般の市民の方向けのセミナーとしては、JICA東北支部が教師、起業、NPO、自治体、青年海外協力隊経験者など多様なアクターによる東北被災地の教訓の発信を行ったほか、植林や海外保全など生態系を活用して行う防災Eco-DRR(Disaster Risk Reduction)についてJICAの協力事例を発信ました。また、世界銀行と共催でフィリピンにおける災害リスク軽減と災害リスクファイナンスについてのセミナーや、開発途上国や国内の大学との共催での耐震建築や災害医療に関するセミナーなどを行いました。

また、一般の方向けの展示では、地球環境部による防災活動の紹介、国際緊急援助隊事務局による医療活動で実際に使用されるテントの展示、JICA関西とJICA東北共同による和歌山県広川町いなむらの火の館津波防災教育センターの協力を得た津波への意識向上を目的とした紙芝居実演紹介や、JICA東北による2013年にフィリピンを襲った台風ハイヤン(フィリピン名:ヨランダ)後の支援活動紹介、コミュニティ防災イベントに対するJICA横浜からの協力などを通じ、日本の経験とJICAの経験を広く発信しました。

JICA協力の相手方(カウンターパート)による貢献

本会議には、JICAによる防災支援の対象機関、カウンターパートや帰国研修員が多数参加して重要な役割を担い、また多くのフォーラムを実施していたこと、そしてJICA支援の成果を発言、発信していたことも成果の一つです。

会議期間中に本体会議場で開催された、イグナイト・ステージと呼ばれる、本体会議参加者に向けての発表会では、JICAの関係部による活動紹介のほか、イラン、トルコやグレナダなどからのJICAのカウンターパートによる発表も多数行われ、多くの聴衆を集めました。

また、会議場内に設置したJICA展示ブースには、多くの帰国研修員が立ち寄り、日本での研修の成果や、主要なポストに就き、現在の活躍ぶりを報告していくなどの光景が見られました。また、今回の国連防災世界会議には、防災関係者だけでなく、各国の外務省や、財政や公共事業を担う省からも、JICAの協力のカウンターパートが参加しており、JICAの防災以外の分野での支援に対しても、感謝の声が寄せられました。

東日本大震災によっていまだ津波の爪痕(つめあと)が残っており、復興への努力を続けている東北でこの会議が行われたことは、大きな意義があります。東日本大震災では、世界各国から多くの支援があり、日本と世界のつながりを再認識する機会になりました。今回の参加者の中には、東日本大震災の際、救助チームとして日本に派遣された方もいて、その後の復興をこの目で見たいという声が聞かれました。

JICAは、これまでの防災協力を通じて蓄積してきた経験と知見、そして阪神・淡路大震災や東日本大震災などから得られた教訓を活用し、防災の主流化を通じた強靭な社会づくり、そして、これらの防災支援による貧困削減と持続的開発を通じた人間の安全保障に貢献していきます。