JICAの取り組み

人間の安全保障の実現 メインイメージ

JICAにおける『人間の安全保障」導入

新JICAは、「すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発」(Inclusive and Dynamic Development)という新しいビジョンを掲げ、このビジョンを実現するため4つの使命を果たします。

このJICAが組織として自らに課している4つの使命の一つに、「人間の安全保障の実現」があります。JICAがこれを最重要な使命のひとつに掲げる背景には以下の3つ問題認識があるからです。

第一に、半世紀を迎えたODAの歴史をふまえ、いま改めて「人間中心の援助」をうたう必要が生じています。これまで、ODAを含む国際協力は、開発途上国の多様なニーズによりよく応えるために、さまざまな工夫を凝らしてきました。その結果、集中と分業が高度に進み、教育や保健、農業といった分野ごとに、あるいは技術協力や無償資金協力、有償資金協力などの援助形態ごとに、細分化されて援助が行われる傾向にありました。しかし人々を取り巻く問題はさまざまであり、またそれぞれの問題は複雑に絡み合っています。その現実に応え、人々が抱える問題に適切に対応するためには、それらの複合的な問題を的確に把握し、総合的に取り組むことが不可欠となってきています。

第二に、冷戦構造の崩壊を契機として、「開発」と「平和」に対する包括的な取組みがますます必要となってきているという点です。貧困にあえぐ途上国の人々の多くは、同時に、武力紛争がもたらす影響を直接、あるいは間接に受け、それによって生命、生活、尊厳が危機にされています。また開発途上国の貧困問題や社会的な格差が紛争要因となっているのも事実です。

第三に、「より困難な状況にある国や地域」に対する取組みを強化しなければならないという認識です。以前は、より効果がみこまれる国・地域に対して支援した方が良いという議論もありました。しかし、「より困難な状況にある国や地域」の人々が直面している問題の改善に取り組むことなくして、国際社会全体の平和と発展はありえない、という共通認識が世界的に形成されてきています。

「人間の安全保障」とJICAの実践方法

私たちは、JICA事業の実施に際して、「人間の安全保障」の考え方を常に念頭におき行動しています。「人間の安全保障」の実践とは、決して画一的なものではなく、それぞれの国・地域の人々が置かれた多様な状況に応じたきめ細かな対応が必要である、と考えています。

これまでのJICAの活動にも、これらの視点が盛り込まれた事業は数多くありましたが、今後はこれまでの事業の活動内容をいま一度見直すとともに、さらに、人々に届き、より大きなインパクト(波及効果)を与える協力をめざしていきます。

JICAでは、「人間の安全保障」の実践を目指すため、人々を中心に捕らえ、人々に確実に届く援助を実践することを基本方針として、協力事業を実施します。そのため、旧来のJICAにおける「人間の安全保障」の7つの視点を「協力の実践方針」および「重要なアプローチ」に整理し、4つの実践方針と4つの重要なアプローチを定めました。