【富山県】バリ島で体験した世界とのつながり ―10人の高校生がインドネシアで学んだこと―
2026.09.28
「環境問題は、自分とは関係のない遠い国の話だと思っていた」
そんな高校生たちが、インドネシア・バリ島での1週間のスタディツアーを通じて、「自分にもできることがある」と語るようになりました。彼らがODAの現場を訪ね、現地の人々と出会いながら、何を感じ、何を学んだのでしょうか。体験の様子をリポートします!
ングラ・ライ国際空港(通称:デンパサール国際空港)到着時の様子
渡航前研修を経て、ついに高校生たちがインドネシア・バリ島へ。
2026年7月26日~8月1日にかけて、公益財団法人かめのり財団、JICA、富山市の協働事業として「高校生インドネシア体験学習」を実施しました。
参加したのは、書類と面接による選考を経て、バリ島へのチケットを手にした富山県内の高校生10名です。
バリの高校生や小学生との交流、環境に関するODA現場の視察、そして国際協力に携わる人々との出会い。実際に現地を訪れたからこその発見と学びがありました。
高校生たちが、特に楽しかった活動として挙げたのが、バリ島の高校生との交流です。最初は英語での会話に緊張している様子でしたが、アイスブレークのゲームなどをするうちに自然と笑顔が増えていきました。
バリの高校生とアイスブレークのゲームを楽しむ様子
「学校生活や将来の夢などについて、さらに深く話をしてみたいと思いました。」
「笑顔やジェスチャーでも気持ちは伝わることが分かりました。」
こうした声から、国や言葉の違いを越えて人とつながる喜びが伝わってきます。
なかでも、大いに盛り上がったのが、「日本の駄菓子」の紹介です。富山の生徒たちが親しんでいる駄菓子に、バリの高校生たちも興味津々。一緒に笑い、楽しむなかで生まれた共感は、国際交流ならではの貴重な体験となりました。
日本の駄菓子を興味深そうに見物するバリの高校生たち
また、環境教育に取り組む小学校を訪問した際には、子どもたちが日本語で「パプリカ」を歌って出迎えてくれ、心温まる歓迎を受けました。
授業では、児童たちがデジタル教材を活用して環境学習に取り組む様子を見学しました。この小学校では、環境に関する授業が週に7コマ設けられており、学年が上がるにつれて学習内容もより専門的になるそうです。
生徒たちは、小学校全体に根付いた環境意識の高さに、強い印象を受けたようでした。
タバナン県の小学校での環境学習の様子
こうした環境教育を支えているのが、富山市を拠点に活動する一般社団法人インドネシア教育振興会(IEPF)です。同団体は、JICA草の根技術協力事業も活用しながらデジタル教材の開発・普及に取り組み、インドネシアで深刻化するごみ問題の解決に向けて、幼少期からの環境教育の重要性を伝えています。
子どもたちの学びを地域全体の行動変容へとつなげていく取り組みに触れ、高校生たちは、途方もなく大きな社会課題であっても“一人ひとり”の意識と行動の積み重ねが欠かせないことを実感したのではないでしょうか。
〇 一般社団法人インドネシア教育振興会(IEPF)の取り組みについて
小学生に囲まれて歓迎を受ける高校生
高校生たちにとって、最も学びが大きかったのは、環境学習だったようです。
バリ島といえば、美しい海やリゾート地を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし現地では、ごみ問題や海岸浸食など、深刻な環境課題が存在しています。
大型のコンポストプラント、マングローブ管理事業、海岸保全事業、小水力発電施設などの現場を視察し、地域の人々やJICA関係者から話を聞きました。
株式会社石橋がバドゥン県に設置したコンポストプラントを見学。同社の別森敬一さんが案内してくださいました。
大型のコンポストプラントは、富山市の株式会社石橋が、JICAの民間連携事業を通じて富山市環境政策課と連携しバドゥン県に設置したものです。この施設では、1日最大50トンの生ごみをたい肥へと再資源化することができます。背景にあるのは、「ごみは、資源として活用できる」という考え方です。富山で培われた知見が、バリ島の環境課題の解決にも生かされていることを実感する現場でした。
○ 株式会社石橋「インドネシア国バリ島における未分別一般ゴミの 減量・再資源化普及・実証・ビジネス化事業」
マングローブ林に囲まれた木道を歩いて散策
マングローブ管理や海岸保全は、JICAが長年にわたりバリ島で取り組んできた事業です。
マングローブ情報センターで私たちを迎えてくれたのは、JICA専門家の戸谷玄さんと尾野亜裕美さん、それに日本語が堪能なガイドのサンティさんです。
戸谷専門家が語った、「継続は力なり」という言葉が印象に残っています。「継続性」はSDGsを考える上でも欠かせない重要なポイントです。生徒たちからは、「国際協力には正解がない」という感想も寄せられましたが、一朝一夕では成果が見えないからこそ、粘り強く取り組み続けることが重要になることを実感できたのではないでしょうか。
○ インドネシア向け技術協力プロジェクト:マングローブの持続可能な管理による気候変動対策
観光客でにぎわうクタ海岸保全事業の見学。事業を担当する日本工営株式会社の大中晋さん、森智弘さんがガイドしてくださいました。
美しい砂浜を守るための海岸保全のプロジェクトや、世界遺産の棚田に設置された小水力発電機は、バリの主力産業である、「観光」を支えることを目指した取り組みです。観光業によって、バリの人々の生活が豊かになっている一方で、観光そのものがバリの環境問題を深刻化させているのも事実です。
「環境について学びに来た自分たちも、ゴミの増加に加担している」
「どうやったらバリのゴミが減るのかをずっと考えていた」
この堂々巡りの「もやもや」には、簡単な正解がなく、解決策も見つけがたい。バリ島の現状や、地元の人々の暮らしに目を向けるなかで、生徒たちは「日本の技術をそのまま持っていくだけでは解決しない」という現実にも気づいていきました。
○ バリ海岸保全事業
○ 水機工業株式会社「用水路対応型小水力発電システムによる 農村地域の電力不足解消に向けた普及・実証事業」
世界遺産として知られるタバナン県ジャティルゥイ村の棚田で現地ガイドの話を聞き入る高校生たち
今回のプログラムでは、バリ島で活動するJICA海外協力隊の経験者、藤本亜子さんを訪ねました。藤本さんは、バリ島の人たちの生活に寄り添う、持続可能な観光事業に携わっています。
協力隊経験者 藤本亜子さん(2012年2次隊/コスタリカ/環境教育)
多くの生徒の心に響いたのが、藤本さんの「できない理由をつくらない」という言葉でした。国際協力への挑戦や病気との闘いなど、自らの経験を交えながら語られたその言葉には重みがありました。
生徒たちは、自分の可能性に限界を設けるのではなく、まず一歩踏み出してみることの大切さを学びました。
風が吹き抜ける心地よい空間でのワークショップの様子
藤本さんが生徒たちに伝えたかったのは、「経験」することの価値ではないでしょうか。教室やインターネットから得られる知識も大切ですが、自ら現場に足を運び、人と出会い、感じたことは、より深く心に刻まれます。その実体験こそが、新たな挑戦や行動を生み出す原動力になることを、生徒たちは身をもって学びました。
藤本さんと肩を組んで記念撮影!
バリ島での学びの本当の価値が問われるのは、むしろ帰国後かもしれません。
現地で目にした環境問題、多様な人々との出会い、そして国際協力の現場で感じた葛藤や気づき。今回体験した「世界とのつながり」を、自分自身の将来や地域社会での「行動」にどう結び付けていくのかが、これからの課題です。
今後、生徒たちは学校や地域イベントで体験を発信していく予定です。インドネシアでの経験が10人の高校生の中でどのように育ち、周囲の人々へと広がっていくのか。その「次の一歩」にも注目していきたいと思います!
環境問題に対する意識の高さに刺激を受けたバリの高校生たちとの思い出ショット!