【JICA海外協力隊】北海道初!JICAグローカルプログラム@上士幌町

2023.10.10

「JICA海外協力隊グローカルプログラム(派遣前型)」は、JICA海外協力隊の合格者のうち希望者が参加するプログラムであり、地方の自治体や団体、民間企業でのOJT(職場での実務訓練)を通じ、地域の活性化に関する知識と経験、コミュニケーション能力、事業の計画策定→実施→モニタリング→評価に係る実践経験等の習得を大きな目的としています。
北海道初の受入地となった上士幌町は、畑作や酪農、林業等の一次産業が盛んな人口5,000人の小さな町でありながら、2021年5月に「SDGs未来都市」、2022年4月には「第1回脱炭素先行地域」に選定されるなど、先進的な取組を数多く行っています。
2023年7月13日より9月22日までの約2カ月間、4名の実習生が上士幌町において、大自然や地域の中で学び、働くことを通じ、町民のみなさんの温かさに触れながら、地域への愛着、まちづくりの取組への理解を育みました。この度、4名が最終報告を行いました。

【実習生】
川満日向子さん(環境教育/エクアドル派遣予定/沖縄県出身)

塚本早紀さん (PCインストラクター/モロッコ派遣予定/茨城県出身)

早坂敦司さん(PCインストラクター/モロッコ派遣予定/北海道出身)

渡瀬なのはさん(幼児教育/スリランカ派遣予定/京都府出身)

彼らに与えられたミッションは上士幌町の課題に対し、地域の資源を生かした改善策を提案すること。限られた時間の中で、課題に向き合い、解決に向けた提案を模索した実習生たち。地域の課題解決にはまずは地域を知ること。イベント等を通して多くの町民の方々との交流しながら取り組んできました。

写真左から塚本さん、川満さん、渡瀬さん、早坂さん

写真左から塚本さん、川満さん、渡瀬さん、早坂さん

川満日向子さん ~上士幌町民マイストーリー展~

川満さんが気づいたのは、上士幌町の『人』が大事な資源であること。そして、人口約5,000人の上士幌町では後期高齢者が900人を超え、自らの力で外に出られない人がいるという課題に向き合いました。そこで、高齢者の新たな居場所づくりの一環として、家から出るのが難しい高齢者に向けた“こころの居場所づくり”を考え、上士幌町町民マイストーリー展として形にしました。
まず、21名の町民に行ったインタビューをそれぞれのマイストーリーとしてまとめて、町の図書館で展示しました。そして、町民のマイストーリーを通じて上士幌の歴史や生活などに関する理解を深め、多種多様な生き方があることを感じてもらい、自身のこれからについて考えるきっかけにしてほしいという目的で、地元の上士幌中学校1年生を対象に道徳「郷土愛」の時間に出前授業“地域の人に学ぼう”を実施しました。
実施後、「町民の人生史は、存在が近いからこそ今さら聞けないことが多い。今回この企画を通して初めて知る部分が多かったので知ることができて良かった、声をかけるきっかけになった」という声がありました。また、インタビューを受けた方の中には、展示を見るために、初めて図書館に来てくれた方もいました。出前授業では、「中学生から人生の先輩方の言葉に感銘をうけた」、「町の歴史を知ることが出来た」など多くの感想があがりました。展示を見た人から、「町の子どもたちが記者になるなどして、インタビューを継続してほしい」という声もあり、町民によるマイストーリー展として引き継がれることを期待しています。

川満さんの展示の様子

川満さんの展示の様子

川満さんの展示の様子

川満さんの展示の様子

塚本早紀さん ~交通ターミナル待合スペースの空間活用について~

塚本さんが取り組んだのは、上士幌町の交通ターミナルの待合スペースの活用方法。町民にヒアリングを行ったところ、待合スペースの活用の改善要望があり、そこに着眼しました。現在、待合スペースは交通の起点のほか、一部は学習・作業スペースとしても機能していますが、より多くの町民にとって身近な空間として有効活用されることを模索して取り組んだのが「町の人によるギャラリー」スペースを設けて実施する写真展でした。町民の声による町の施設の改善提案を行うことで、今後町民の更なる町づくりの自分事化が促進され、町民同士の新たな気づき・発見から新しいコミュニティ創出が期待できると考えたのです。
今回の写真展では、町民であり世界80ヶ国以上撮り続ける伴公夫さんとの共同出展という形式で、伴さんからは世界の写真、そして企画者である塚本さんからは来町間もない視点で撮った上士幌町の写真を展示しました。
来場者からは「面白い、今後も続けてほしい」、「バス待合時間で楽しめた」、「写真で知ったお店があった」などの感想が寄せられるとともに、待合スペースの活用方法として「生徒の書道や絵」、「上士幌町の魅力を知る掲示」、「手芸、陶芸クラブの作品」の展示や他のイベントもご提案頂きました。今回の展示をきっかけに、町民同士の新たな気づき・発見も生まれたようです。今後の活用方法について更なる改善・向上を検討頂き、町民による様々な活用を続けて頂きたいです。

塚本さんの展示の様子

塚本さんの展示の様子

塚本さんの展示の様子

塚本さんの展示の様子

早坂敦志さん ~オンライン海外体験 高齢者×高校生×テクノロジー~

PCインストラクターとしてモロッコへ派遣予定の早坂さんが目につけたのが、上士幌町の高校生のスマホとタブレット知識の高さでした。彼らの技術と町で行うITを活用した福祉支援やスマホ・タブレット普及促進の取組が町の資源であると考え、IT技術を使ったテクノロジーによる居場所作りを企画しました。
企画の背景には、高齢者の方からの「旅行は好きだけれど、体力的に海外には行けない」、「若い世代との交流は元気を貰える」という声がありました。そこで、タブレットを駆使できる高校生に協力してもらい、町がデジタル活用の入口として行っているタブレットのレンタル配布事業を活用することで、上士幌町に居ながらの海外体験を実現しました。対象は60歳以上の町民の方々。旅先はアフリカのモザンビーク! 同国でJICA海外協力隊として活動中の中山舞子さんが現地の日常をご紹介しました。中山さんは、コロナ禍で派遣が延期になり、待機期間中に上士幌町で2020年に実施した「特別派遣前訓練」に参加されており、オンライン海外体験にお越しいただいた参加者の中には、中山さんが当時お世話になった町民のお姿もありました。
当日は参加者7名とタブレットの補助をする高校生7名が、タブレットを通した海外との交流や世代間交流を実施。参加者からはオンライン海外体験はもちろん、若い世代との交流が楽しかったという声もあり、世代間交流の居場所作りの目的も達成できました。これから早坂さんはモロッコへ派遣されますが、今後は高校生が企画を行い、早坂さんは海外を案内する立場としての参加を考えています。今回上士幌町でお世話になった実習生の派遣国はモロッコ、スリランカ、エクアドル。今後の上士幌発オンライン海外体験で是非ご案内したいです。

早坂さんのオンライン海外体験の様子

早坂さんのオンライン海外体験の様子

早坂さんのオンライン海外体験の様子

早坂さんのオンライン海外体験の様子

渡瀬なのはさん 誰もが集える場作り~えんがわcafé~

渡瀬さんは、上士幌町在住の外国人に注目しました。町の外国人は増加して十勝では上位に入りますが、町では外国人をあまり見かけないことに気が付いたのです。調べてみると、休日は心身の疲れを癒したい人が多く、町民との交流も決して多くないことが分かりました。
そこで目指したのが、外国人が帰国後に「上士幌町にきてよかった」と上士幌町や日本の良さを母国の人に話したくなるきっかけ作りや、外国人と町民の両者が自然体で無理のない交流の促進でした。対象は外国人労働者と町民。そして、外国人在住者と地元・上士幌の日本人による交流会「えんがわCafe」が開催されました。企画・実施の道のりは決して容易ではありませんでしたが、町民の皆さんなど周りに相談することで輪が広がり、スタッフ含め約40名が集う交流の場が出来ました。当日は2時間の交流会に23名の参加者(ベトナム12名、モンゴル4名、日本7名)が集まりました。
イベントも盛り沢山で、浴衣を着ての写真撮影をはじめ、けん玉パフォーマンスショーや体験、そして抹茶の試飲やベトナム料理(春巻き・フォー)を一緒に食べながら交流を図り、初めての交流会は大盛況でした。参加者アンケートでは、全員から満足で次回も参加したいと回答が寄せられました。今回の交流会をきっかけに、町民と在住外国人の交流の機会が増え、関係が深まることを期待しています。

渡瀬さんのえんがわCaféの様子

渡瀬さんのえんがわCaféの様子

渡瀬さんのえんがわCaféの様子

渡瀬さんのえんがわCaféの様子

プログラムを終えて

活動をするうえで、いかに町民の方々の理解や協力が重要で貴重なものであったかを実感した実習生たち。「この2か月でしか得られない経験や出会えた人々は一生ものです」 という実習生の言葉の通り、実習生4人にとって上士幌町での経験はかけがえのない時間となったようです。

改めて、受け入れて下さった上士幌町のみなさまに、ご協力頂いたすべての方に、感謝申し上げます!これからが彼らのスタートです。引き続き、温かく見守ってください。


グローカル生4名の活動動画はこちらから
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230912/7000060854.html
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230820/7000060098.html


特別派遣前訓練についてはこちらから
https://www.jica.go.jp/Resource/obihiro/topics/2020/20200924.html

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