【研修コース】十勝とエジプトの市場志向型農業でアラブ圏の農業変革を目指す!
2025.03.12
2025年1月8日から1月24日まで課題別研修「アラブ圏市場志向型農業振興(行政官)」コースを実施し、アラブ圏(エジプト、スーダン)から11名の研修員が参加しました。
本研修は、途上国の農家が「作ってから売る」ことを考えるのではなく、市場で「売るために作る」ものを考えるという意識変容を喚起し、農家の栽培・営農スキルの向上を通して所得向上を目指す小規模農家支援の「市場志向型農業振興(SHEP: Smallholder Horticulture Empowerment & Promotion)」アプローチを実践するプログラム構成としています。
詳しくはJICAのSHEPアプローチに関するHPをご覧ください。
URL:https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/shep/
JICA北海道センター(帯広)で行われた研修では、SHEPの概念や手法、アプローチについて学んだあと、十勝地方での市場を意識した農業生産・流通・販売の事例として関係機関を訪問しました。
特に農業協同組合や農業改良普及センターの仕組みや技術普及の在り方、市場の透明性、販売時の差別化の工夫などに研修員の注目が集まりました。また各関係者間の信頼関係や感謝の言葉がモチベーションにつながっていることにも高い関心が寄せられ、限られた時間で最大限吸収しようと質問が止まりませんでした。
訪問後は得た知見をもとに、パレスチナ講師によるワークショップや今後の活動計画を作成しました。「ワークショップによって自分たちの業務を振り返るとともに、新たなアイディアのブレインストーミングもできた」という意見もありディスカッションに熱が入りました。
帯広出発日には積雪もあり、研修員は普段自国では見ることのできない雪を堪能!また十勝の事例だけでなく、スーダン・エジプト・パレスチナ間の知見や経験を共有することができ、最後は音楽に合わせ皆で列になりお別れを惜しむなど国を越えたつながりも生まれました。
直売所視察の様子
ワークショップの様子
来日研修終了後、1月26日から1月30日まで在外補完研修をエジプトで実施しました。
エジプトでは、帯広で学んだSHEPアプローチを現地で実践し、そこで得た気づきなどを基に、研修終了後のアクションプランを作成しました。
現地の市場調査では、研修員は、農家の立場になり、作物の種類や品質、需要のピークなどを市場関係者から聞き取りし、その結果を基に栽培する作物や出荷時期等を話し合いました。
また、エジプトで実施中のJICA技術協力プロジェクト「小規模農家の市場志向型農業改善プロジェクト(ISMAP)」の対象地域であるアシュート県Komboha村の視察を行いました。この村では、伝統的に小麦やトウモロコシを育てていましたが、SHEPプロジェクトをきっかけに、市場調査を行い、新たにニーズのある食材を農家さん自ら選び、ニンニクなど様々な食材を育て始めました。また、収穫した作物を卸売市場に持っていくだけではなく、村内で直営販売するなど、輸送コストを考え、工夫して実施していました。
アシュート卸売市場での市場調査の様子
アシュート県Komboha村での視察の様子
この在外補完研修を踏まえたアクションプラン発表会では、研修員から以下のコメントが出されました。
・市場調査や作物選定のやり方について、言葉では理解していたが、実際に自ら実施することで、事前にどのような準備が必要か、どのように実施するか理解できた。 (エジプト農業省職員)
・月例会を通じた各県のフォローアップや質疑応答の機会を設けるとともに、対象県以外に展開していきたい。(エジプト農業省職員)
・プロジェクト対象農家以外にもISMAP アプローチを普及したい。(エジプト、ミニア県職員)
アクションプラン発表会の様子
また、在外補完研修終了後、2月2日・3日の両日、国際ワークショップを実施しました。
国際ワークショップでは、パレスチナ、スーダン、エジプトのSHEPの技術協力プロジェクトの進行状況などを共有することができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。
国際ワークショップの一環で、SHEPアプローチを通じて成果を上げた村(ミニア県KomMatai村)の視察を行いました。
SHEPアプローチの中では、ビジネスの機会を男女均等に与えることを重視し、男性だけではなく、女性にも農業の機会を与えるように工夫していることから、KomMatai村では、市場調査を行って鳩を育て始めました。最初は、市場に出荷していたのですが、顧客のニーズに合わせて出荷の際に梱包するなど工夫し、現在では、食用に加工するなどニーズに合わせた販売を実施し、顧客からの信頼を勝ち取っているケースもありました。
国際ワークショップの参加者からは以下のコメントが出されました。
・スーダンでは、エジプトのようにSHEPの活動が作り込まれてなく、実施の規模も限られているが、今回、農家がどのようにISMAPアプローチを実践しているか知ることが出来たので、帰国後にスーダンでのSHEPアプローチをさらに展開し、皆様に良い報告が出来るようにしたい。(スーダン農業省職員)
国際ワークショップの様子
各国の事例発表の様子(エジプト)
KomMatai村での家畜飼育の視察の様子
皆さんの抜群なチームワークでアラブ圏の各地にSHEPアプローチが普及されることを願っております!
閉講式の様子
scroll