研修員に聴く~日本で出合い、出会ったもの~(後編)

2023.09.28

研修員は日本の地方をめぐり、どのようなアイディアを見つけたのでしょうか。また、研修員同士の話し合いからはどのような新たな気づきがあったのでしょうか。前編に続き、JICA東京インターンのインタビューによる、課題別研修に参加の研修員7名の声をお届けします。

地方で出合うアイディア

ドミニカ共和国の観光協会に所属しているRosa Reyesさんは、「観光マーケティング・プロモーション」の課題別研修に参加しています。同コースの研修員は茨城県、静岡県、宮城県など合計10県を回り、日本の地方における観光振興のための取り組みを見学してきました。
特に印象深かった地を尋ねると、山梨県の茅野市尖石縄文考古館で見つけたアイディアについて話してくれました。当博物館には、屋外に縄文時代の暮らしを再現したエリアがありました。この当時の空気を感じられるこのアイディアは、自国の歴史遺跡にも使えるとRosa Reyesさんは考えています。また、足尾銅山を視察した際には、人々の公害に打ち克つ勇気、公害経験を顧み伝えていく勇気に感銘を受けたと言います。他にも軽井沢のホテルでは、コロナ禍において宿泊客の声に真摯に耳を傾け、常に市場の動きを把握し、柔軟に対応することの大切さが印象的だったそうです。
インタビューを通し、多くの研修員たちがこうした地方視察を通して、新たな知見や有益なアイディアを沢山得たことが窺えました。コロナ禍の対応やコロナ後のニューノーマルに向けた取り組みなど、持続可能な開発をめぐる課題は世界共通なのだと実感します。

ROSA REYES Jennyさん
(課題別研修「観光マーケティング・プロモーション ―ニューノーマルに向けて―」、JICA東京所管)

共通の課題を考える

気候変動や保健医療、水資源など数々のグローバルな共通課題をめぐり、JICA研修という場に、世界各国の知見が集められています。
ユニバーサルヘルスカバレッジをテーマとするコースでは、日本の経験の共有だけではなく、独自の医療体制を作り上げたタイの医療関係者による講義も開かれました。また、同研修の研修員、タイの国立病院長のJittanoonさんによると、日本の医療保障制度が優れている一方でタイの医療保障制度にも強みがあり、また途上国と状況が似た部分もあるため、日本とは異なる良い参照事例となります。同研修に参加する南アフリカ人のNgcoboさんも、インタビューのなかで、「我が国の状況はタイとよく似ていて、タイの経験はとても参考になりました」と述べました。
また、そのほかの研修員へのインタビューからも、研修員同士の交流がとても良い機会となっていたことが窺えました。「研修でなければ関わることのなかった遠い国のことを知ったり、そのような国も実は自国と似たような問題を抱えていることに気づいたりできた」「研修員たちからも多くのことを学べた」といった声が上がりました。
社会課題の解決法に絶対的な正解はないものの、共通の課題について話し合う人が集まれば、そこから何かの可能性が生まれてくるかもしれません。JICA研修はこうした共通課題をめぐる諸国の経験を共有する場としての役割も持っています。

JITTANOON Thapakornさん(左から2人目)が同研修の研修員と交流する様子
(課題別研修「ユニバーサルヘルスカバレッジ達成のための医療保障制度強化」、JICA東京所管)

日本で得た知見を自国に

日本で学んだ研修員にとって、またJICAにとって、研修はゴールではありません。「スポーツを通じた障がい者の社会参加の促進」の研修に参加したカザフスタンのOtorbayevさんは、「研修を通して豊かな経験ができた。毎日新たな学びがあり、全て自国にとって新しいものだった。それらを国に持ち帰り共有し実践することが、スポーツ面と障がい者の社会参画面の両方でアクティブな立場にある自身の使命であると感じている」と熱い思いを話してくれました。多くの研修員が彼のように、明るい未来を願いながらJICA研修に参加しています。
JICA研修で多様な知識や人々と出会い、学んだ研修員は、何を自国に持ち帰り、どのように実践に繋げていくのでしょうか。自国での実践は、時に障壁を伴います。Rosa Reyesさんは、他国の知見を自分の国で活かすために越えるべき障壁を説明してくれました。日本と自国の社会状況・条件の違い、新たな提案と既存の計画との整合性、そして予算と人材育成の課題が挙げられました。
課題解決は容易ではありませんが、解決に繋がる道があることを知るのが第一歩です。様々な課題と危機がグローバル化している今日、多様な開発の在り方について語り合い、学び合い、課題解決の能力を培う絶好の場として、JICAの研修があるのでしょう。

OTORBAYEV Ardakさん
(課題別研修「スポーツを通じた障がい者の社会参加の促進」、JICA東北所管)

JICA東京のインターン生が研修員に取材する様子

JICA東京インターン ウ ジンユアン・金井 綾花

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