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『ジャカルタ漁港物語-ともに歩んだ40年-』の著者、折下氏がJICA 国際協力感謝賞

2016年10月18日

JICA研究所が発刊しているプロジェクト・ヒストリーシリーズの第10弾、『ジャカルタ漁港物語-ともに歩んだ40年-』の著者で、開発コンサルタントとしてジャカルタ漁港プロジェクトなどの国際協力事業に約45年間かかわってきた折下定夫氏(株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル)が2016年度のJICA 国際協力感謝賞の受賞者に選ばれました。折下氏は10月13日にJICA市ヶ谷ビルで開かれた表彰式で、北岡伸一JICA理事長から感謝状を受け取り、「長い間、さまざまなプロジェクトにかかわってきたことが認められ、光栄に思います」と感想を述べました。

北岡理事長から感謝状を受け取った折下氏(右)
北岡理事長から感謝状を受け取った折下氏(右)

折下氏は、1971年4月、ODA案件を主に取り扱う開発コンサルタント会社に入社。ジャカルタ漁港プロジェクトとのかかわりでは、1978年に同漁港/魚市場整備事業に参画して以来、2012年に終了した同漁港リハビリ事業まで、さまざまなプロジェクトに従事してきました。その後も、ジャカルタ漁港への各種ミッション・視察団への事業説明や案内を行うほか、2003年以来、年1回、ジャカルタ日本人学校5年生の社会科見学でジャカルタ漁港を紹介しています。
折下氏は、このジャカルタ漁港プロジェクトだけではなく、他にもJICAが行う国際協力に長年にわたって協力頂いており、そのご功績から、今回、感謝賞が贈られることになりました。

『ジャカルタ漁港物語-ともに歩んだ40年-』は、折下氏が、インドネシアの脆弱な漁港を漁業基地として整備するプロジェクトが発足するところから、新漁港の設立、開港後に発生した諸問題の解決までの軌跡をまとめたものです。

折下氏が整備にかかわったジャカルタ漁港内の魚市場(写真:今村健志朗/JICA)
折下氏が整備にかかわったジャカルタ漁港内の魚市場(写真:今村健志朗/JICA)

水産業は、インドネシアの主要産業の一つで、その拠点となるジャカルタ漁港水産物取扱量は約27万トン(2014年)にもなり、日本の主要漁港の取扱量とほぼ同等の規模を誇ります。しかし、この漁港ができる以前は、船が停泊するための設備は不十分で、市場や加工場なども整っていませんでした。そこで日本のODA事業によって、港を整備し、インドネシア水産業における漁業拠点とすることを目指す円借款プロジェクトが立ち上がりました。プロジェクトによって、巨大漁港が誕生し、中央水産物卸売市場や水産加工団地なども整備されました。

感謝状を受け取った折下氏は、ジャカルタ漁港のプロジェクトとのかかわりについて、「事業が動いていないときも、現地がどうなっているか、問題がないか、常に気になった。問題が起きれば(かかわった)会社として解決したいと思った。年に数回は現地を訪れて状況を確認し、現地政府とも緊密に連絡をとった」と話し、組織の一員でありながら、一つの事業にかかわり続けられたことを「わがままを通させてもらった」と感慨深く話しました。印象に残っていることとして、マングローブを活用した護岸の取り組みなどを挙げ、「日本では考えられないことだが、日本のものさしをそのまま持っていくのではなく、現地で出会ういろいろな事象にそのものさしを順応に修正しながら取り入れることが重要」と強調しました。

受賞の喜びとともに、かかわった事業について話す折下氏
受賞の喜びとともに、かかわった事業について話す折下氏

一方、かかわった国際協力事業の中でもっとも印象深い事業として折下氏は、モルディブの首都マレがあるマレ島での護岸整備を挙げました。これは海抜が1~2メートルしかない同島が1987年の高波で大きな被害を受けたために始まった取り組みで、折下氏らは防災性のみならず特異な社会自然環境も重視し、一部の護岸に人工ビーチの計画を導入、実施しました。2004年12月のスマトラ沖大地震・インド洋津波で、同島にも大津波が押し寄せましたが、1人の死者も出ませんでした。折下氏は「あの護岸がなければ、壊滅的な被害になったのでは」と振り返りました。

68歳となった現在もサモアでの事業にかかわる折下氏は「コンサルタントに定年はない。元気である限り、現役でコンサルタントを続けたい。後輩の育成も重要であり、ジャカルタ漁港の本を書いたのも、その取り組みの一つ」と話しています。

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