JICA緒方研究所

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中南米8カ国の経営陣・従業員への調査からカイゼンプロジェクトを評価-島田招聘研究員がアルゼンチンで発表

2017年3月31日

JICA研究所の島田剛招聘研究員(静岡県立大学准教授)が2017年3月10日、アルゼンチンで開かれた日本式経営に関するセミナーで発表を行いました。島田招聘研究員は発表の中で、中南米8カ国の企業の経営陣と従業員双方を対象に行った聞き取り調査の結果を踏まえ、中小企業の品質・生産性向上に果たすカイゼンプロジェクトの効果について説明しました。

カイゼンを導入した工場
カイゼンを導入した工場
(写真:今村健志朗/JICA)

このセミナーは、JICAと在アルゼンチン日本大使館、アルゼンチン商工会議所、アルゼンチン国立工業技術院の共催、アルゼンチン工業連盟とCAECE大学の後援で開かれました。

「カイゼン」活動とは、業種や規模、生産環境などに応じて、それぞれの職場で、品質や生産性を向上させるために実践されてきた取り組みの総称で、日本の高度成長を生産現場から支えてきた要因の一つとも言われています。島田招聘研究員は、産業振興のためには、生産性と品質の向上が必要であり、経済成長のエンジンは中小企業であることを、アルゼンチンや日本をはじめとするいくつかの国の現状・推移などをグラフや表で示しながら指摘し、JICAのカイゼンプロジェクトの効果について説明しました。

島田招聘研究員が示したのは、政策研究大学院大学の園部哲史副学長と共同で行っている中南米8か国(グアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、ドミニカ共和国、コスタリカ)での定量分析の中間報告です。島田招聘研究員らは、JICAの「中小企業の品質・生産性向上に係るファシリテーター能力向上プロジェクト(中米・カリブ広域)」(2009年~2013年)にかかわった企業を対象に、経営陣と従業員双方から聞き取り調査を行い、比較群の企業と比較を行いプロジェクトの効果を傾向スコアマッチング手法によって分析しています。

発表する島田招聘研究員
発表する島田招聘研究員

島田招聘研究員は分析の結果、経営陣と労働者(および労働者間)の協力関係の強化、生産性向上、労働環境の改善、賃金の向上、経営者のカイゼン研修に対する支払い意思額などに正のインパクトがあったことが分かってきたと述べました。。

一方、島田招聘研究員は、カイゼンの有用性を感じた時期について、プロジェクト開始後3カ月以降(6カ月、終了後という答えも含む)との答えが、経営陣で20%、従業員では約35%あることや、そもそもカイゼンを導入することに労働者から理解を得ることが難しかったとの答えもあることを指摘し、カイゼンの導入に当たってはインパクトが出るまでに時間がかかることを理解しなければならないこと、また、労働者の理解を得る工夫をすることが実施上の重要なポイントになることを指摘しました。

セミナーでは在アルゼンチン日本大使館の福嶌教輝大使があいさつ、JICA産業開発・公共政策部の向井直人企画役が世界の様々な国で実施しているカイゼンプロジェクトを紹介し、アルゼンチン国立工業技術院のマルコス・イグナシオ・ロドリゲス氏がアルゼンチンでの成功事例を紹介しました。トヨタとホンダがカイゼンの取り組みを報告し、最後にJICAアルゼンチン事務所の三田村達宏所長がカイゼンの歴史に触れつつセミナー締めくくりました。

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