JICA緒方研究所

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環境社会配慮の質の向上を目指し研究成果を発表—上條研究員

2017年6月20日

研究成果を発表する上條研究員
研究成果を発表する上條研究員

2017年6月13日、JICA研究所は研究発表会「JICA環境社会配慮の質の向上」を開催し、JICA研究所の上條哲也研究員が研究成果を報告しました。

第一部の「環境アセスメント報告書の質に対する代替案分析と住民協議の改善」では、JICA環境社会配慮ガイドラインが導入された2004年の前後で環境アセスメント報告書の質に変化があったのかどうかを分析するため、2001年から2012年の間に作成された報告書から無作為に抽出した120冊の分析結果を発表しました。2005年以降は報告書の質の向上が確認できたことから、ガイドラインの導入の効果はあったと説明しました。

その要因の因果関係を示すモデルを示しながら、住民協議の実施が事業者の環境社会配慮への意識の向上につながることを説明しました。環境社会配慮のプロセスの中では、事業がもたらす環境や社会への影響について早期から調査・検討を行い、影響を回避・最小化するための代替案の分析が特に重要であり、住民協議と共に実施することにより、報告書の質が向上すると指摘しました。

環境影響評価の分野に携わる実務者も多く参加
環境影響評価の分野に携わる実務者も多く参加

第二部の「主成分分析を用いた代替案の検討と住民協議の改善」では、グアテマラでの空港事業、フィリピンでの国道事業、カンボジアでの橋梁事業(いずれも2006年)を取り上げ、議事録の計量テキスト分析結果を発表しました。事業者や住民など利害関係者別に、環境、社会、開発、代替案、住民参加意識について発言したパラグラフの数を示し、代替案と住民参加意識については正の相関関係があることから、代替案分析の改善により住民協議が活性化する可能性を指摘し、その改善手法として主成分分析を提案しました。

当日は環境影響評価に携わる実務者や研究者など約35人が参加。ガイドラインの導入効果や報告書の質の向上に関する分析は参考になったという意見のほか、実際の現場では代替案の分析が限定的になってしまうといった声も挙がりました。また、2013年以降の報告書の質に関するデータを追加したさらなる分析への高い関心も示されました。

発表資料

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