JICA緒方研究所

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知識創造と対話で新興国とのネットワークを築く—ドイツのMGGプログラムについてセミナー開催

2017年10月17日

研究者や開発コンサルタントなどが参加し、活発な議論が行われた

JICA研究所は、2017年10月3日に公開セミナー「ドイツの新興国ネットワーク関与戦略:マネージング・グローバル・ガバナンスの経験に学ぶ」を開催しました。

ドイツでは、政府や研究機関の協力のもと、「マネージング・グローバル・ガバナンス(MGG)」という研修プログラムが実施され、先進国と新興国の協働による開発協力の成功事例として注目を集めています。このセミナーでは、MGGプログラムを先導してきたドイツ開発政策研究所(DIE)のトーマス・フュース研修部長と、パートナー国の一つである中国で中心的な役割を果たしてきた中国農業大学の李小雲(リ・シャオユン)教授が登壇しました。

冒頭、JICA研究所の北野尚宏所長が開会のあいさつを行い、JICAの南南協力・三角協力によるキャパシティービルディングの経験を共有しました。事例の一つとして、チリと共同で中南米各国の防災に携わる人材育成を行い、地域全体で防災の知識を共有できるネットワークを構築するプロジェクトを紹介しました。そして、このセミナーでは、MGGの事例を通した新興国との知識創造や知識共有のためのプラットフォームのあり方などについて、実りある議論になることを期待すると述べました。

ドイツ開発政策研究所(DIE)のトーマス・フュース研修部長がドイツの戦略について講演

続いて、フュース部門長がMGGプログラムの概要とその経験について基調講演を行いました。同プログラムは、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、南アフリカの6カ国から、毎回約20人の若手研究者・政府職員をドイツに招き、約3カ月半、国際的な援助構造、G20とアフリカのパートナーシップ、SDGs達成に向けた公的セクターの役割などのテーマにフォーカスして学ぶものです。フュース部長は、参加者同士で新興国が抱える課題にどう対応するかを共に考え、国際社会の発展に貢献するグローバルアジェンダを形作るといった「知識創造」を目指していることを説明しました。また、社会変化をもたらすためには異なる利害関係者の相互理解が必要不可欠なため、「対話」を重視し、多様なアクターとの協働に力を入れており、政府、国際機関、企業、市民社会との連携や、卒業生のネットワーク化にも努めていることを説明しました。

ドイツの取り組みはユニークで貴重とコメントした中国農業大学の李小雲(リ・シャオユン)教授

基調講演を受けてコメントした李教授は、新興国の台頭などパラダイムシフトが起こりつつある国際社会において、これからは自国の利益のためではなく、国際社会にとっての共通の課題解決に貢献することが求められていると述べ、MGGはそうした時代に大きな変化をもたらすユニークかつ貴重な存在だと、その活動を高く評価しました。

会場からの質疑応答では、MGGプログラムの強みや、グローバル・ガバナンスを構築する際に各国の利益が衝突したらどのように調整するのかといった幅広い質問が挙がり、活発な議論が交わされました。

最後に、JICA研究所の萱島信子副所長が閉会のあいさつを行い、MGGプログラムがキャパシティービルディングと知識創造を組み合わせることで成功していることに触れ、JICAのキャパシティービルディング支援でもMGGプログラムからの学びを取り入れることができればと抱負を語りました。

関連動画

【講演】「ドイツの新興国ネットワーク関与戦略」トーマス・フュース・ドイツ開発政策研究所研修部長(JICA研究所公式チャンネル)
※講演内で紹介されるMGGプログラムについての動画はこちら⇒www.youtube.com/embed/OZl154JWTDQ

【プレゼンテーション】「マネージング・グローバル・ガバナンス—新興国の視点から」李小雲(リ・シャオユン)中国農業大学教授(JICA研究所公式チャンネル)

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