JICA緒方研究所

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紛争とジェンダーに基づく暴力研究の執筆者会合を開催—川口研究員

2018年6月6日

意見交換した川口智恵JICA研究所研究員、田中雅子上智大学教授、難民を助ける会の福井美穂氏(左奥から)

2018年5月11日、JICA研究所の研究プロジェクト「紛争とジェンダーに基づく暴力(GBV):被害者の救援要請と回復プロセスにおける援助の役割」の第2回執筆者会合が開催されました。JICA研究所の川口智恵研究員、盛岡大学の飛内悠子准教授、難民を助ける会の福井美穂氏がそれぞれ研究の進捗を発表し、JICA研究所の武藤亜子主任研究員やアドバイザーとして参加した上智大学の田中雅子教授らと意見交換しました。

紛争影響下で起こりやすくなるジェンダーに基づく暴力(Gender Based Violence: GBV)は、被害者の心と体に大きなダメージを与えるだけではなく、その被害を他人に伝えて支援を求めることに心理的・社会的な障壁が高い問題です。2017年4月から始まった同研究は、GBV被害の実態に着目するのではなく、GBV被害者はいつ、だれに、どのような支援を求めるか、または求めないのはなぜかといった行動に着目し、GBV被害者に必要な支援は何かを明らかにするのが目的です。ウガンダに大量に流出した南スーダン難民を対象に、「GBV」という言葉への意識などについて聞き取り調査を行い、具体的な改善策を考えていきます。

今回の執筆者会合では、まず川口研究員が2018年2月に行った現地調査の進捗と、これを踏まえて執筆するワーキングペーパーの概要を説明しました。現地では、ウガンダ西ナイル4県、キリアドンゴ、カンパラの6カ所に住む南スーダン難民を対象に、男性グループと女性グループごとに1回ずつ、計12回のフォーカス・グループ・ディスカッションを行い、個別インタビュー調査と併せると述べ241人(男性115人、女性126人)が参加する調査を実施しました。現地関係者へのフィードバックミーティングを開催するところです。川口研究員はこの調査結果から、人々のGBV認識の中には、性暴力だけでなく、家庭内暴力(Domestic Violence: DV)や親密なパートナーによる暴力(Intimate Partner Violence: IPV)も含まれていることを紹介。また、GBV被害者が救援を要請するか否かを決定するのは、被害者から一番近い家族のほか、難民コミュニティー内のオピニオンリーダーや教会という答えが多かったことを紹介しました。

続いて飛内准教授が、アジュマニ県にあるモンゴラ難民居住地で実施した調査で観察された難民のジェンダー観やGBVに対する意識について、文化人類学の視点から発表。人々はGBVを問題として認識はしているものの、GBVは家庭内もしくはコミュニティー内で解決すべき問題と捉えており、GBV被害者への外部からの支援の存在は知っていても使おうと考えない状況もあることなどを報告しました。

GBVに関する国際社会の動きとして、2000年に国連安全保障理事会で採択されたのが決議1325号(Women, Peace and Security)。紛争が女性に及ぼす不当に大きな影響を取り上げ、GBVを含むあらゆる暴力から女性と女児を保護する特別な措置の必要性を明記したものです。福井氏は、この決議の国際規範がモヨ県の難民居住区でどの程度適用されているか、GBV被害者支援システムを改善するにはどうしたらいいかなどについての聞き取り調査を踏まえて報告しました。

これらの研究成果は、2018年5月のウガンダでの現地調査結果も踏まえ、3本のワーキングペーパーとして2018年度中に発表する予定です。

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