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International Network for Economic Research年次会合で中国の大気汚染研究の中間成果を発表—山田研究員

2018年10月17日

International Network for Economic Research年次会合の参加者たち(写真提供:INFER)

2018 年9月5~7日、International Network for Economic Research (INFER)の年次会合がドイツのゲッティンゲン大学で開催され、JICA研究所の山田英嗣研究員が研究の中間成果を発表しました。INFERは約1000人の会員を擁するヨーロッパを中心とした経済学者のネットワーク。今回の年次会合では、3つの招待講演と20のパラレル・セッションが行われ、大学や研究機関、中央銀行の研究者など、約90人が参加しました。

山田研究員は6日に行われたパラレル・セッションで、「The Impact of Domestic Migration Policy on Economic Welfare and Air Pollution: A New Spatial Equilibrium Approach for China」と題して登壇。これは、JICA研究所の研究プロジェクト「アジアの都市大気汚染環境改善の方策に関する研究」のワーキングペーパーとして山田研究員が執筆中の論文「A Spatial Equilibrium Analysis of Air Pollution in China」の分析結果をもとに発表したものです。

同研究は、急速な経済成長と都市化に伴って排出が増加しているPM2.5などの汚染物質について、アジア諸国で排出状況と要因を分析し、大気環境を改善する政策の検討を目的にしています。山田研究員は経済活動の地理的な分布を分析する空間経済学の手法を環境問題に応用し、中国の大気汚染について分析しています。

大気汚染が広がる中国の首都北京

今回発表した論文では、多数の地域で構成される中国経済の理論モデルを構築し、都市間の輸送コストや各都市での排出規制によって、経済活動や大気汚染の分布がどのように変化するのかシミュレーションを行っています。中国全土の約300都市のデータ(経済統計、地方政府の予算、汚染物質の排出状況など)や道路ネットワークの情報など、実際に観測されたデータをモデルに当てはめ、実際に行われた政策と行われなかった政策を比較しています。例えば、2007年以降に新しい道路を建設しなかったまま2013年を迎えた(つまり、都市間の輸送コストが2007年の水準のまま)と仮定した場合、中国経済全体の生産量と汚染物質の排出は2013年の実現値より低下するものの、汚染と人口の分布の関係から大気汚染による健康被害の水準は大きくなっていた可能性を示しました。

山田研究員はこれまでに得られた成果として、空間経済学の理論的枠組みは現実的な環境下での経済活動と公害の空間的分布の分析に利用できることや、地域間格差を縮小する政策は全体的な効率の改善も可能であることを報告しました。次のステップとして、1)シミュレーションに使うパラメータの選択の影響、2)移民コストの拡大、3)道路開発の代替シナリオの影響を分析する必要があると締めくくりました。

発表後のディスカッションでは、国内移民のモデル化の前提や大気汚染の空間的散乱モデル化の方法、 鉄道の役割、調査結果の解釈についてなど、有益なコメントを得ることができました。これらのコメントなども踏まえ、山田研究員は研究成果をまとめ、今後発信していく予定です。

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