JICA緒方研究所

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世界社会科学フォーラム(WSSF)で人間の安全保障研究の成果を発表—萱島所長ら

2018年10月29日

研究プロジェクト「東アジアにおける人間の安全保障の実践」の研究者が登壇

2018年9月25~28日、世界の人文・社会科学系の国際学会から構成されるInternational Social Science Councilによる第4回世界社会科学フォーラム(World Social Science Forum: WSSF)が福岡国際会議場で開催されました。27日のパラレル・セッションにて、JICA研究所の萱島信子所長(当時/現主席研究員)が研究プロジェクト「東アジアにおける人間の安全保障の実践」について発表したほか、武藤亜子主任研究員が人間の安全保障についてJICA研究所が政策提言をまとめたポリシー・ノートを紹介しました。

萱島所長は、同研究プロジェクトが始まった経緯について、2012年に人間の安全保障の共通認識が国連で合意されて以降も、実践での運用において定義に争点を残し、多国間での研究協力が進んでいなかったことへの問題意識に端を発していることを説明しました。東アジア各国に拠点を置く研究者や実務者36人が参加し、まず、人間の安全保障の“概念”がどのように理解されているか、政府関係者、法律家、研究者、NGO活動家、ジャーナリストなど、幅広いターゲットへのインタビュー調査を100以上実施。次に、東アジアでの10の事例研究において、国家主権の扱いや包括的な支援の供給、ボトムアップのエンパワーメントの促進の観点から、人間の安全保障がどう“実践”されてきたかを検証してきました。その成果として、1つのポリシー・ノート、14のワーキングペーパーに加え、2冊の書籍『Human Security Norms in East Asia』、『Human Security and Cross-border Cooperation in East Asia』が発刊されたことを紹介しました。

人間の安全保障についての政策提言を紹介したJICA研究所の武藤亜子主任研究員

武藤主任研究員は、同研究プロジェクトの成果に基づいて作成されたポリシー・ノートによる3つの提言を紹介。1)人間の安全保障において、政府による保護と人々のエンパワーメントは補完関係にあり、災害時には一時的に人々のエンパワーメントが弱まるので、ドナーなど外部アクターによる政府の保護機能強化の支援は人間の安全保障に寄与するが、その後の復興においては人々のエンパワーメント強化の支援へとシフトする点に注意すべき、2)緊急時に確実に支援が人々に届くよう、政府、非政府を問わず、ステークホルダーが水平的な協働を促進し、ローカルレベルで人々に耳を傾け、ニーズを正確に把握するべき、3)外部アクターは、平時から相手国の国家主権を尊重した支援を行っていると、緊急時に被災国政府に主権侵害といった疑いを抱かせることなく、適切な支援を行いやすくなると強調しました。

また、同研究に携わったJICA研究所の峯陽一客員研究員(同志社大学教授)は書籍概要を紹介し、東アジア地域のアカデミア・実務家双方がネットワークを構築することの大切さを訴えました。韓国梨花女子大学校のウンミ・キム教授は持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)の達成に向けてグローバルなレベルで人間の安全保障を推進すべきであると述べ、中国復旦大学のレン・シャオ教授は国レベルでの人間の安全保障の実践について紹介。最後に、フィリピン大学のカロリーナ・ヘルナンデス名誉教授より、さまざまなレベルにおける人間の安全保障の推進が重要であるとのコメントがありました。さらに、活発なパネルディスカッションも行われました。

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