JICA緒方研究所

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タジキスタンの家計と海外送金に関する研究成果を共有─村上研究員ら

2018年12月24日

JICA研究所の村上エネレルテ研究員と山田英嗣研究員が参加しているJICA研究所の研究プロジェクト「フィリピンとタジキスタンの家計における海外送金に関する研究」では、海外への出稼ぎ移民が自国の家計にどのようなインパクトを与えているかを明らかにすることを目指しています。

この研究活動の一環として、両研究員は、世界銀行がタジキスタンで実施している調査「Listening to Tajikistan (L2TJK)」にも参画。これは2015年5月から進行中で、同国全土の800家計を対象に約2週間に1回、電話による家計調査を行っており、村上研究員らは出稼ぎ移民と海外送金についての質問項目を追加してパネルデータを収集しています。

ロシアでの会議で研究成果を発表したJICA研究所の村上エネレルテ研究員

その成果を発表するため、村上研究員は2018年10月11、12日に、ロシアの首都モスクワで開催された「2nd IZA/HSE Workshop: Ten Years after the Financial Crisis - Labor Market Adjustment in Emerging and Post-Transition Economies」に参加しました。同会議は、Institute of Labor Economics (IZA)とロシア国立研究大学経済高等学院(National Research University Higher School of Economics: HSE)の共催。10年前の世界金融危機の影響を振り返りながら、新興国や開発途上国の人々に平等で積極的な労働市場への参加を促すため、関連する研究や知見を共有することを目的にしています。

村上研究員は10月12日に行われたセッション「Issues of Wage Inequality and Labor Supply」で、「The Impact of Migration and Remittances on Labor Supply in Tajikistan」と題した発表を行いました。まず、タジキスタンの経済状況として、同国では、旧ソビエト連邦から独立した1991年以降、より良い就労機会を求めて海外での出稼ぎ労働者が増加し、近年、海外に出稼ぎに出ている家族がいる家庭の割合は40%にのぼり、そのうちの90%はロシアで働いていること、タジキスタン経済は出稼ぎ労働者からの海外送金に大きく依存し、2006年以降、GDPの30~50%を海外送金が占めていることなどを紹介しました。

村上研究員は、「配偶者のいる大家族や、家長が年配もしくは女性である家庭は出稼ぎ労働者がいる割合が高く、反対に家族に18歳未満の子どもや障害者がいる家庭はその割合が低いことなどが明らかになった」と述べました。さらに、この賃金では働かないという留保賃金が、タジキスタン国内に残された家族の労働市場の参加率に大きく影響していると指摘。家族内に出稼ぎ労働者がいる、もしくは送金を受けている家庭の就労率は、そうではない家庭より8~11%ほど低く、これは海外からの送金で家計が潤っている分、留保賃金の額が上がっているからだと考えられます。また、国内に留まる家族の就労率は家族に出稼ぎ労働者がいるかどうかより、送金の額により影響を受けていることも報告しました。高頻度のパネルデータというL2TJKの特性を活かし、留保賃金への影響について既存研究に比べて信頼性の高い推定を行っています。

タジキスタンを訪れ、調査について議論する村上研究員(右端)とJICA研究所の山田英嗣研究員(右から2人目)

また、村上研究員と山田研究員は2018年11月11~16日にタジキスタンを訪問し、関係省庁やコミュニティーを訪れ、その地域の役場や家庭、学校での聞き取り調査を実施。また、現地の国際機関や研究者を招いたミニワークショップも開催し、村上研究員は自然災害が出稼ぎ移民に与える影響や親の出稼ぎが子どもの教育に与える影響について、また山田研究員はタジキスタンの人々の日常的な移動手段や頻度、コスト、目的などについて、L2TJKをはじめとした各種のデータを活用したこれまでの研究成果を発表しました。

今回の訪問を通して、住民たちの生計手段や家庭内での役割分担、出稼ぎ労働者と家計の関係性などについて、パネル調査で収集している定量定期なデータを補完する定性的な情報を多く得ることができ、貧困層の家庭や農村部・都市部の学校などが抱える課題についての理解を深めることにつながりました。

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