「途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究」への協力に、ベトナムの大学が意欲—萱島主席研究員らが現地へ

2019.04.15

2019年4月4、5日の2日間、JICA研究所の研究プロジェクト「途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究−アセアンの主要大学の教員の海外留学経験をもとに−」の現地調査をベトナムの首都ハノイで行いました。

本研究は、開発途上国の大学教員の留学経験が母国の大学の発展にもたらしたインパクトを分析することを目指しています。今後、そのデータ収集の一環として、カンボジア・インドネシア・マレーシア・ベトナムの計10大学の全教員、総勢1万人以上を対象にしたウェブ上での質問紙調査の他、国や大学ごとの留学事情の変遷の調査、留学経験のある教員へのインタビューを行う予定です。これらの量的・質的な分析を通じて、大学の発展に主眼を置きつつ、留学した教員の送り出し国への効果や受け入れ国との二国間関係への効果に与えたインパクトの検証を試みます。

今回の現地調査では、JICA研究所の萱島信子主席研究員、黒田一雄客員研究員、辻本温史リサーチオフィサーが、ベトナムの対象大学に対して、本研究の意義を説明し先方の理解を得ると共に、調査・研究の進め方を協議するために、大学の関係者らと面談を行いました。

トップレベルの工学系大学として、同国の工学分野の教育・研究をけん引してきたハノイ工科大学では、Hoang Minh Son学長と面談。Hoang Minh Son学長は本研究に積極的に協力することを表明したうえで、本研究の結果を同大学の人材育成計画などでも活用したい意向を示しました。さらに、Nguyen Phu Khanh渉外部長らとデータの収集方法や扱いなどについて協議し、今後の進め方について基本的な合意を得ました。

傘下に7大学と多数の教育・研究機関を抱えるベトナム国家大学ハノイ校においては、Nguyen Hoang Hai副総長と面談。Nguyen Hoang Hai副総長は、本研究で得られるデータや研究成果は他国や他大学にとっても有用だと思われると述べ、本研究に全面的にコミットすることを表明しました。また、共同研究として本研究に参加する意向を示しました。加えて、留学先(国)による効果の違いについて質問があり、これに対して調査チームは、留学先によって特徴が異なるため、本研究で質的調査も組み合わせながら明らかにできればと回答しました。

今回の現地調査では上記2校の他、ベトナム教育訓練省も訪問し、研究の概要を説明したうえで、意見交換を行いました。同省では、留学した大学教員は新しいプログラムを立ち上げるなど大学の発展に貢献しているなどのコメントが得られました。

今回訪問した大学や関係機関が本研究への協力について前向きな回答を示したのは、これらの機関がこれまでJICAや日本の大学・企業と、多様で豊かな協力関係を築いてきたことが背景にあるとうかがわれました。

本研究では、今回訪問した2大学以外の調査対象大学とも協議を進め、各大学の協力のもと、2019年中に質問紙調査を開始する予定です。

ベトナム国家大学ハノイ校Nguyen Hoang Hai副総長と萱島主席研究員(左)

ベトナム教育訓練省での意見交換の様子

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