実施中プロジェクト
途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究-アセアンの主要大学の教員の海外留学経験をもとに-発展途上国における公的セクターの高度人材の海外留学経験は、個人の知識技能の獲得、キャリア形成や意識変容に大きな影響を与えています。こうした留学経験者は、国の政治的・経済的・文化的・学術的な発展を支え、ひいては、自国と留学先国の間の二国間外交・国際関係にも大きな影響を与えてきました。こうした認識に基づき、日本を含め、多くの先進諸国が政府開発援助を通じた発展途上国からの留学生招へい事業を実施してきました。しかし、海外留学のインパクトに関する実証的研究は、先進国間の留学において個人の能力や認識の変容に対する留学のインパクトに関するものがほとんどで、途上国から先進国への留学が送り出し国の社会・経済に与えたインパクトについては、これまで明らかにされてきませんでした。
そこで、本研究では、海外留学が途上国に与えたインパクトを明らかにするために、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ベトナムにおける知識基盤形成の拠点となり指導的人材の育成に重要な役割を果たす主要な大学を取り上げて、教員の海外留学が与えたインパクトに関する量的研究と質的研究を実施します。分析にあたっては、複数の送り出し国、大学、渡航先国、渡航時期、教員を取り巻く環境などの要因がインパクトの発現にどのように影響するのかについての量的分析を行い、さらに特定大学の発展の歴史の中で教員の海外留学が果たした役割を明らかにするための事例研究(質的分析)にも取り組みます。これら研究から見いだされた知見は、今後の日本の留学生政策や大学の留学生受け入れの取り組みに重要な示唆を与えることが期待されます。
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