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途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究プロジェクトの書籍ローンチセミナーをインドネシアのガジャマダ大学にて開催

2024.09.05

2024年8月15日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の研究プロジェクト「途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究―アセアンの主要大学の教員の海外留学経験をもとに― 」の研究成果をまとめた書籍のローンチセミナー「Half Day Seminar and Book Launch on the Impacts of Study Abroad on Higher Education Development: Examining the Experiences of Faculty at Leading Universities in Southeast Asia」を、JICA緒方研究所と研究調査参加大学であるインドネシアのガジャマダ大学(Universitas Gadjah Mada: UGM)が共催しました。

インドネシアのガジャマダ大学で開催された書籍ローンチセミナーで意見交換

アセアン4ヵ国の大学教員の留学経験が与えるインパクトを分析

本研究プロジェクトは、大学教員の留学経験が教員のその後の学術活動に及ぼす影響や所属大学の発展に与えるインパクトを明らかにすることを目的として、アセアンのトップ大学(4ヵ国10大学)と協力して2018年より実施してきたものです。2019~2022年にかけて質問紙調査とインタビュー調査の大規模なデータ収集が行われ、2024年8月に研究成果をまとめた書籍『Impacts of Study Abroad on Higher Education Development: Examining the Experiences of Faculty at Leading Universities in Southeast Asia 』が発刊されました。

UGMで開催された本ローンチセミナーでは、本書の発刊と研究成果について高等教育関係者やUGMの教員・学生と共有し、意見交換が行われました。まず、インドネシアの研究協力者であるUGMのWahyu Supartono氏から研究の概要説明と、UGM文化科学学部のMimi Savitri氏から開会あいさつが行われ、双方から高等教育における日本による協力やその発展について言及がありました。

続いて、UGMのVissia Ita Yulianto氏の司会のもと、JICA緒方研究所の萱島信子 シニア・リサーチ・アドバイザーが「Impacts of Study Abroad on Higher Education Development―Examining the Experiences of Faculty at Leading Universities in Southeast Asia」と題し、本研究プロジェクトの目的、概要および書籍について説明し、対象4ヵ国(カンボジア、インドネシア、マレーシア、ベトナム)全体の分析結果を発表しました。質問紙調査とインタビュー調査のデータの分析から、対象4ヵ国の大学教員の留学の状況は時代とともに変化していること、いずれの国でも留学経験はその後の教員の活動にポジティブなインパクトを与え、大学の国際化にも大きく貢献していること、一方で、国内の大学院教育の発展にともない留学インパクトの発現状況は国間の差異が生まれていること、さらに留学先国によって留学経験の特徴が異なることなどが示されました。

書籍の紹介と対象4ヵ国全体の分析結果を発表したJICA緒方研究所の萱島信子シニア・リサーチ・アドバイザー(中央)

バンドン工科大学とガジャマダ大学の事例から見えたプラスのインパクトとは

また、ケーススタディーとして、インドネシアのバンドン工科大学(Institute Technologi Bandung:ITB)の研究チームを代表して、上智大学の梅宮直樹教授が同書9章で取り上げたITBの事例「Trajectory and Impacts of Study Abroad Experiences of Academic Staff at ITB」を、また、UGMの研究チームを代表して、UGMのWahyu氏が同書8章で取り上げたUGMの事例「The Impact of Studying Abroad on the Three Pillars of Higher Education at Universitas Gadjah Mada, Indonesia: Challenges and Breakthroughs」を発表。ITBの事例では、教育活動、研究活動、そして国際的な活動において海外留学のインパクトは国内就学(大学院)のインパクトに比べて有意に高いこと、留学先国によって、よりインパクトが強い活動が異なることが示されました。一方、UGMの事例では、研究や教育活動だけではなく、マネジメントやコミュニティーサービスにおいても留学のインパクトが大きいこと、UGMで強く進められている海外大学とのダブルディグリーやジョイントディグリープログラムなどの大学の国際化にも影響があることが示されました。いずれのケースでも、留学経験が教員のさまざまな活動にプラスのインパクトを及ぼしていることが指摘されました。

同書9章について発表した研究協力者の上智大学の梅宮直樹教授(右端)

また、研究協力者であるITBのYudi Soeharyadi氏も本セミナーに参加し、ITBの研究成果について、学生の送り出しや留学先国の特徴、研究データの取り扱いについてコメントしました。

質疑応答では、本研究プロジェクトで調査対象とした4ヵ国の選択の理由、国内就学に比した留学のインパクトが4ヵ国で異なる要因、本研究成果の政策的示唆やその活用方法、日本の留学協力の在り方、日本をはじめとした留学先国の特徴についてなど、幅広い議論が交わされました。

今後は、日本への留学と帰国後の日本との学術協力の関係をより明らかにするための追加研究を実施し、学術論文などにまとめる予定です。

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