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No.13 留学経験が大学教員の活動や大学の国際化にもたらすインパクト―東南アジアの主要な大学における実証研究から―

  • #ポリシー・ノート
  • JICA緒方貞子平和開発研究所は、大学教員の留学経験がその後の教員の教育研究活動や大学全体の学術活動にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするため、マレーシア、インドネシア、ベトナム、カンボジアの主要大学10校を対象に実証研究をおこなった。本ポリシー・ノートは、この研究結果から得られた政策的示唆を取りまとめたものである。
  • 提言1:途上国の大学教員の留学経験は、大学の教育研究活動全般にプラスのインパクトをもたらしている。なかでも、教員が留学をつうじて得た国際的なネットワークや語学力、国際的な経験は、大学の国際化を促進して、途上国のリーディング大学の質の向上に大きく貢献している。高等教育の国際化に大学教員の留学が果たす役割を十分に理解することが重要である。
  • 提言2:途上国において、大学教員の留学は大学の国際化に重要な役割を果たす一方で、国内の大学院教育の発展のためには国内就学の促進も重要である。教員の上級学位取得に関する政策において、留学と国内就学のバランスを十分に考慮するべきである。また、国内の大学院プログラムにも国際的な学術経験を得させる機会を組み込む必要がある。
  • 提言3:途上国の大学教員の留学先国は特定の国に集中する傾向にあるが、留学先国の多様化は、豊かな国際ネットワークを築いて大学の国際化に貢献するのみならず、大学に多様な留学経験をもたらし、留学先国によって異なる強みと弱みを最大限いかすことにもつながる。大学教員の上級学位取得のための留学は、公的な奨学資金でまかなわれることが多いので、奨学金を提供する途上国政府・先進国政府・国際機関などは、留学先の多様化に十分に配慮すべきである。
  • 途上国においても、学術の発展には国際的な協力と競争が必要な時代になった。途上国の高等教育の発展のためには、国内の大学院プログラム育成とバランスを取りながら、大学教員に多様で豊かな留学の機会を提供し、留学経験がいかされる環境を整備することが重要である。
著者
萱島 信子
発行年月
2024年8月
ページ
13ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #教育
  • #日本の開発協力
研究領域
人間開発
研究プロジェクト