jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

国際開発学会第36回全国大会でJICA緒方研究所の研究成果を発表

2026.02.02

2025年11月29、30日に、「平和と開発の展望を開く―未来に向けた対話」をテーマに掲げた国際開発学会第36回全国大会 が広島大学で開催されました。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)から参加した研究員らの発表内容は以下の通りです。

【一般口頭発表】大学教員の留学を通じて形成される国際学術協力関係のメカニズムに関する実証研究ー日本とインドネシアを事例としてー

萱島信子 シニア・リサーチ・アドバイザーと上智大学の梅宮直樹教授は、 JICA緒方研究所の研究プロジェクト「途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究-アセアンの主要大学の教員の海外留学経験をもとに- 」のフォローアップ研究について報告しました。

本研究では、資源工学分野における日本留学で博士号を取得した8人のインドネシア教員と彼らを留学生として受け入れた本邦大学教員5人に対して実施したインタビュー調査のデータを社会交換理論の枠組みを使い、分析しています。両者間では博士留学が起点となって多様な学術協力が展開されていますが、その関係が公平かつ互恵的であることから信頼が醸成され、さらなる協力へとつながっている一方、制度的・財政的支援も重要な促進要因となっていることを報告しました。コメンテーターや参加者からは、他分野・他国との比較や促進要因の有機的な関わりなどに言及・質問があり、活発な議論が行われました。

写真:上智大学の梅宮直樹教授

上智大学の梅宮直樹教授

【一般口頭発表】The Impact of Adoption of Climate-smart Practices on Horticulture Yield: Lessons from Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion Approach in Ethiopia

研究プロジェクト「SHEPアプローチの小規模農家への効果に関する実証研究(SHEP研究) 」の一環として、九州大学大学院農学研究院・農業資源経済学専攻のアスミロ・アベジェ・フィカド氏と野村久子氏が、エチオピアにおける小規模園芸農家市場志向型農業振興アプローチ (Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion: SHEP)の下で、気候スマート型園芸(climate-smart horticulture: CSH)の実践が園芸作物の収量にどのような影響を与えるか、実証的な研究成果を発表しました。他の共同研究者は、ドイツのライプニッツ農業景観研究センター(Leibniz Centre for Agricultural Landscape Research: ZALF)のギルマ・ゲブレ氏と、日本の沖縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology: OIST)のパヤル・シャー氏です。具体的には、分位点回帰モデルと逆確率重み付けを組み合わせ、CSH導入およびSHEPアプローチが園芸作物の収量に与える分布的な影響を明らかにしました。その結果、農家が同じSHEP研修を受けたとしても、生産量(収量)には違いが生じる可能性があることが分かりました。

写真:九州大学大学院農業資源経済学専攻のアスミロ・アベジェ・フィカド氏

九州大学大学院農業資源経済学専攻のアスミロ・アベジェ・フィカド氏

討論者や参加者は、園芸作物の生産性を高めるためにCSH実践を適切に調整する重要性を指摘しました。また、SHEPのインパクトが農家間で異なる場合、特に収量の少ない農家への政策的意義が強調されました。さらに、議論では、定性的な地域の知見を定量分析により深く統合する必要性も議論されました。全体として、このセッションでは、政策への示唆をさらに深め、本研究が気候に強い農業開発に貢献する上での意義をより明確にするための貴重なフィードバックが得られました。

【ラウンドテーブル】「知」をめぐる大競争時代における国際教育開発:援助機関の影響力を問う

本ラウンドテーブルは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDG)の4で掲げられた「良質な教育」の定義や、その達成に向けた効果的な政策・実践をめぐり、ドナー間で「知」を競い合う動きが一層顕著になっている状況において、援助国・機関が被援助国の教育政策や実践にいかに関与しているのかを多角的に考察することを目的として実施されました。

池田亜美 研究員は、「国際教育協力プロジェクトを契機としたパートナー国の変化:JICA技術協力『ケニア中等理数科教育プロジェクト 』の事例から」のテーマで発表を行い、国際協力はパートナー国の視点からは一過性の介入である中、「ケニア中等理数科教育プロジェクト」は、プロジェクト終了後10年以上を経た現在も、ケニア自身の政策や制度に沿って現職理数科教員研修を自ら改定・構築するプロセスにある事例として紹介しました。他の登壇者からは、教育分野のドナー関与にかかる整理や、中国や日本の協力にかかる分析の発表もあり、登壇者・参加者を交えたディスカッションでは、国際教育協力を通した日本社会への循環などについても議論が行われました。

【ラウンドテーブル】「人間の安全保障の視点からみた開発援助における『人の移動』とは―Aspiration-Capability拡張モデルの提案

JICA緒方研究所にて実施中の「海外労働希望者の国際移動経路と経路選択メカニズムに関する研究 」の主査である齋藤聖子 主任研究員と折田朋美 主席研究員、李千晶主任調査役(JICAガバナンス・平和構築部)が中心となって開催した本ラウンドテーブルでは、討論者として佐藤寛 客員研究員(開発社会学舎)とJICA企画部の室谷龍太郎審議役が登壇し、de Haas氏のaspiration-capability理論を人間の安全保障の視点から再構築した上で、移動パターンに応じた「適切なタイミングで適切な人に適切な介入を行う」方法論の構築について議論しました。

人間の安全保障を人の移動の文脈で考えたときに、何が脅威となり、保護およびエンパワメントはどのようにあるべきかについて議論を深めました。また、開発協力を通じて、潜在的に脆弱な移民にもアプローチすべきである点が強調されました。

写真:左から佐藤寛客員研究員、李千晶主任調査役、齋藤聖子主任研究員、折田朋美主席研究員

左から佐藤寛客員研究員、李千晶主任調査役、齋藤聖子主任研究員、折田朋美主席研究員

【ラウンドテーブル】Resilience, Peacebuilding, and Preventing Violent Extremism: A Complex Systems Perspective on Sustaining Peace

今日、ますます不確実性が高まる世界において、暴力的過激主義の出現と拡散は、平和と開発の進展にとって依然として大きな障害となっています。こうした背景の下、本ラウンドテーブルでは、オープンアクセス書籍『Resilience, Peacebuilding, and Preventing Violent Extremism』 が紹介されました。同書は、JICA緒方研究所が実施した研究プロジェクト「レジリエンスと平和構築、暴力的過激主義に関する研究:複雑なシステムにおける持続的平和への視座 」の成果をまとめたものです。書籍の寄稿者であるルイ・サライヴァ氏(宮崎国際大学)、武藤亜子 専任研究員、ウデニ・アプハミラゲ氏(東京外国語大学)が、モザンビーク、シリア、スリランカの事例研究を発表し、暴力的過激主義の複雑なダイナミクスと、それに対抗・防止するためのレジリエンスおよび適応型平和構築アプローチを示しました。

これらの事例を踏まえ、議論は書籍のより広範な主張に移り、従来の安全保障主導型アプローチよりも、社会的結束、レジリエンス、適応型平和構築を重視する点が強調されました。マリアム・アルクバチ 研究員、折田朋美 主席研究員、JICA企画部の室谷龍太郎審議役からも重要な視点が示されたほか、会場からの質問も活発な議論につながりました。例えば、外部の関係者がコミュニティーの能力強化にどのような役割を果たせるか、またコミュニティーレベルのレジリエンスが国家のレジリエンスとどのように結びつくか議論しました。複雑な社会システムが暴力的過激主義による脅威にどのように対応するか、そして平和構築アクターがレジリエンスおよび適応能力の強化を通じて持続的な平和の実現に向けてどう社会を支援できるか、意見交換を通じて明らかになりました。

写真:JICA緒方研究所の武藤亜子専任研究員

JICA緒方研究所の武藤亜子専任研究員

【ラウンドテーブル】サスティナビリティの環(還)流回路~国際開発協力が生み出す内外接続のデザイン

本セッションは、複合危機と不確実性の時代において、国際開発協力を単なる開発途上国支援にとどめず、ドナー国内の持続可能性やグローバル課題への対応にも結びつける「複線的な環流回路」として再定義するという韓国ソガン大学のキム・ソヤン教授などによる問題意識から設定されました。佐藤寛 客員研究員が司会を務め、折田朋美 主席研究員はJICAの調査研究プロジェクト「国際協力を地域の力に~JICA市民参加協力事業を中心とした国内事業の地域の国際化・活性化への貢献度にかかる調査~ 」から得られた知見を発表しました。発表では、JICAの国内事業が地域社会における国際化・活性化を促し、国際協力の成果を国内に環流させる仕組みとして機能していることを示しました。また、他の研究者から提示された「日本のODAの価値は内外接続のデザインに見い出せるのではないか」という問いに対し、これを支持する視座を提示しました。

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
トピックス一覧

RECOMMENDこの記事と同じタグのコンテンツ