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海外労働希望者の国際移動経路と経路選択メカニズムに関する研究

研究の背景

海外への労働力移動は世界的にも大きな流れとなっており、送出国では、一般労働者とその家族の生活そして経済への大きな貢献、受入れ国では、産業現場での恒常的な人手不足による海外からの労働者が担う役割が期待され、今後さらに強まると予想されています。

今後の労働力移動の増加を見据え、労働者が安全に移動できるルートの強化・拡大のために果たすべき国際協力の在り方についての検討が必要となっています。安全な移動ルートを拡大・強化するためには、送出・受入れ国の国としての事情だけでなく、様々な個人的事情をもつ海外労働希望者(以下、希望者)に対応できる移動ルート、つまり、彼らのリスクを最小化し、利益を最大化できる移動ルートを構築することが重要ですが、その要素を特定する必要があります。

研究の目的

本研究は、希望者の経路選択メカニズムの解明を目的とします。具体的には、国際労働移動の準備から送出までの希望者の意思決定に影響を与える要因の特定を行い、希望者のリスクを最小化し、利益を最大化できる移動ルートが備えるべき要素を特定します。また、影響を与える要因は、送出国、受入れ国の労働市場および政府の労働政策から、海外労働希望者が属するコミュニティーで蓄積された資本に関するもの、また、海外労働希望者が抱える個人的要因までを対象とします。つまり、プッシュプルモデルのようなマクロ要因だけでなく、メゾ、ミクロのすべてのレベルを対象とし、複合的で重層的な海外労働移動の動態把握をより精緻に行うことを目標としています。

国際移動を行う労働者の主体性を前提とする考え方は、近年新しい流れとなっており、移民の移動先のコミュニティーへの適応パターンに焦点をあてた研究が多い中、人々が国際労働移動を希望してから目的国を絞り、就労を最終的に決定するまでの送出国内の要因に焦点をあてた研究はまだ多くありません。

本研究の成果は、海外労働希望者がリスクを最小化し、利益を最大化できる移動先として日本を選択するために、日本が満たすべき要素を特定し、その要素をもった移動ルートの構築に資する日本の国際協力の在り方を示し、ひいては、日本が課題とする新興送出国の開拓への貢献が期待できるものです。

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