JICA緒方研究所ナレッジフォーラム「人の移動」を人間の安全保障の視点でとらえなおす:全ての人にとっての「安心・安全」な移動回廊とは? 日本の役割とは?
掲載日:2025.05.01
セミナー |
世界では戦争、政治的不安定、気候変動、経済格差により、かつてないほどの規模で人々が移動しています。 2016年に国連総会で採択された「難民と移民のためのニューヨーク宣言」は、我々は人類史上、前例のない「人の移動」を経験しているという認識のもと、難民と移民の保護強化へ向けた計画を採択しました。
日本の社会もいま、人口構造の変化と人の移動が同時に進む新しい局面を迎えています。現在、日本に在留する外国人は約358万人で過去最高を更新し続けています。2040年には688万の外国人の働き手が必要となるものの、そのうち約97万人が不足すると推計されています(JICA緒方研究所「2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた調査研究―外国人労働者需給予測更新版―
」)。現在、日本にいる外国人労働者の8割以上がアジア出身ですが、これからは世界中から多様な人材を受け入れる可能性が視野に入ってきます。国連の予測によれば、2010年から2050年の間に世界の労働力人口は約15億人増加し、そのうち10億人がアフリカ大陸からの増加と見込まれています。このように経済・社会開発の視点から「人の移動」を捉える重要性が益々高まる中で、私たち緒方研究所では、「人の移動」のあるべき姿として、いかに難民・移民と彼らに関わる人々にとっての「安心・安全な」移動回廊を実現できるのかを問い続けています。
近年、国境を超える人の移動は「技能」の需要と供給の観点から議論されることが多く、多くの受入国では技能を基準とした選択的移民政策が導入されてきました。これにより、移民は「商品化」され、送出国では、技能訓練や資格の厳格化など自国民の「技能価値」を高める政策が進められています。しかし、本フォーラムでは「人の移動」を単なる「技能の取引」とは見做さず、『人間の安全保障』の観点に基づき「すべての人が命、暮らし、尊厳をもって暮らせる社会」をつくるための手段として捉え直します。
本フォーラムでは、JICAが取り組んでいる移住に関するプロジェクトに加え、国際移住機関(IOM)の移民調査研究も取り上ます。ディスカッションでは、移動を「人」の視点から捉えたaspiration-capability理論の移民研究の第一人者のヘイン・デ・ハース 氏、世界の人々の移動や避難状況を体系的に追跡・モニタリングするIOMの「避難民動向モニタリングシステム(DTM:Displacement Tracking Matrix)」の統括責任者のローラ・ニストリ氏、アジアにおける人の移動について造詣が深い早稲田大学のグラシア・リュー・ファーラー 氏、出入国在留管理庁の元長官(初代)の佐々木聖子氏をお迎えし、「安心・安全」な移動回廊について具体的に議論します。日本と世界が転換期にある今、これから日本が進むべき方向を皆様とともに考えていきたいと思います。
なお、前日6月12日(木)には、関連イベントとして「【厚生政策セミナー/開発協力セミナー】これからの移民政策をどう描くか ―分断の時代の新しいヴィジョンを求めて―
」を国立社会保障・人口問題研究所との共催で実施いたします。本フォーラムと併せ、ぜひそちらにもふるってご参加ください。
14:00-14:05(5分)開会あいさつ
・亀井 温子
JICA緒方貞子平和開発研究所 副所長
14:05-14:10(5分)趣旨説明
・齋藤 聖子
JICA緒方貞子平和開発研究所 主任研究員
14:10-14:25(15分)問題提起1:技能と移民
・齋藤 聖子 JICA緒方貞子平和開発研究所 主任研究員
14:25-14:40(15分) 問題提起2:移動ルートと移民
・ラウラ・ニストリ(Laura Nistri)国際移住機関(IOM)Global DTM コーディネーター
14:40-14:50(10分) 問題提起をうけて
・グラシア・ファーラー(Gracia Liu-Farrer)早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授/早稲田大学アジア国際移動研究所 所長
14:50-16:00(70分) ディスカッション・質疑応答
モデレータ
・齋藤 聖子 JICA緒方貞子平和開発研究所 主任研究員
パネリスト
・ハイン・デ・ハース(Hein de Haas)アムステルダム大学 教授
・佐々木 聖子 公益財団法人入管協会 業務執行理事/元 出入国在留管理庁長官
・グラシア・ファーラー(Gracia Liu-Farrer)早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授/早稲田大学アジア国際移動研究所 所長
・折田 朋美
JICA緒方貞子平和開発研究所 主席研究員
以下のリンクからお申し込みください。
※お申込みは2025年6月12日12:00(正午)で締め切らせていただきます。
JICA緒方貞子平和開発研究所(担当:竹内・梶野)
メール:dritrp@jica.go.jp
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