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大学教員の留学がもたらすインパクトとは?マレーシアでの高等教育セミナーで分析結果を共有

2023.08.08

2023年5月9日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の研究プロジェクト「途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究―アセアンの主要大学の教員の海外留学経験をもとに―」 の一環で、JICA、マレーシア技術大学(Universiti Teknologi Malaysia: UTM)、上智大学が高等教育セミナー「Impacts of study abroad on higher education development in Malaysiaを共催しました。

本研究プロジェクトはアセアンのトップ大学(4ヵ国10大学)と協力して2018年より実施しているもので、2022年度に大規模なデータ収集は完了しています。本セミナーでは、データ分析が進んで得られつつある重要な研究成果を、参加大学である UTM、マレーシア科学大学(Universiti Sains Malaysia: USM)のほか、マレーシアの高等教育関係者と共有し、意見交換が行われました。

まず、JICA緒方研究所の杉村美紀客員研究員 (上智大学教授)の司会のもと、マレーシア科学大学高等教育研究所のMorshidi Sirat名誉教授が「Higher Education Development and Study Abroad Experiences of Faculty in Malaysia」と題し、マレーシアの高等教育の発展と大学教員の留学について発表しました。

司会を務めたJICA緒方研究所の杉村美紀客員研究員

司会を務めたJICA緒方研究所の杉村美紀客員研究員

JICA緒方研究所の萱島信子シニア・リサーチ・アドバイザー からは、本研究プロジェクトの目的や概要を説明し、対象4ヵ国(カンボジア、インドネシア、マレーシア、ベトナム)全体の分析結果が発表されました。この分析では、留学経験者と非留学経験者の比較から、大学の教育、研究、社会貢献、大学運営に関する活動・項目のうち、特に国際的な内容が関係する項目について対象4ヵ国全てで統計的に有意な差が見られ、留学経験が正のインパクトを及ぼしていることが示唆されました。

JICA緒方研究所の萱島信子シニア・リサーチ・アドバイザーは対象4ヵ国全体の分析結果を発表

またケーススタディーとして、UTMの研究チームを代表してShadiya Mohamed Saleh Baqutayan上級講師からUTMの事例、USMの研究チームを代表して、USM高等教育研究所のMagdalene Ang研究員からUSMの事例が発表され、質問紙調査結果に加え、インタビュー調査の結果について各大学の分析結果が共有されました。いずれのケースでも、留学経験が教員の活動にプラスのインパクトを及ぼしていることに加えて、国際化が急速に進むマレーシアの高等教育環境において、留学を通じて培われた国際的なネットワークが一層重要になっていること、その一方で留学から帰国した教員が母国の大学の文化や慣習に違和感を感じるなど再適合の問題もあることなどが指摘されました。

質疑応答では、海外学位取得と国内学位取得の定義や留学の役割、マレーシアの高等教育における人材管理や政策など、幅広い議論が交わされました。

今後、本研究プロジェクトでは詳細な分析を進め、研究成果を書籍にまとめていく予定です。

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