JICA緒方研究所

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質の高い成長に向けカイゼンが導く“学習する企業”とは?—書籍発刊セミナー開催

2020年3月10日

ブルッキングス研究所のジョン・ペイジ上席研究員

2020年2月27日、JICA研究所主催の公開セミナー「質の高い成長につながる“学習する企業”~カイゼンを再考する~」がJICA市ヶ谷ビルで開催されました。新型コロナウィルス流行の影響を受け、インターネットでのライブ配信による開催となりました。

JICA研究所は、日本式の生産性向上・品質管理手法である「カイゼン」について、開発途上国と先進国の研究者ネットワークであるGlobal Development Network(GDN)との共同研究プロジェクトを2017年から実施。2020年2月に、その成果をまとめた書籍『Workers, Managers, Productivity: Kaizen in Developing Countries』が発刊されました。

中部産業連盟の梶川達也執行理事(左)と日本貿易振興機構アジア経済研究所の佐藤寛上席主任研究員

それを記念した今回のセミナーでは、まず、編者の一人であるブルッキングス研究所のジョン・ペイジ上席研究員が同書の内容を紹介。ペイジ上席研究員は、「開発途上国の企業がグローバル・バリュー・チェーンを通して国際市場へ参入するためには、生産性・品質の改善が必須。特に途上国の中小零細企業の生産性の底上げには、日本企業で成果を上げたカイゼンが大きな鍵になる」と述べ、カイゼンは、コスト削減、生産性・品質向上、製品・サービスへの需要増だけではなく、経営者と労働者が情報共有をして問題解決を図る “学習する” 企業への成長、ひいては持続的な企業能力の向上につながると、同書のケーススタディーにふれながら解説しました。

次に、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所の佐藤寛上席主任研究員が同書についてコメント。日本の戦後や高度成長期に、カイゼンの手法は製造業の現場だけでなく、農村の生活改善にも大きな効果をもたらしたことを紹介しながら、「カイゼンはいつどんな企業に最も有効か」といった疑問を投げかけました。また、一般社団法人中部産業連盟の梶川達也執行理事・上席主任コンサルタントは、カイゼンの研修を提供する側の視点から同書が多様な国・地域、事業規模でのカイゼン導入事例を包括的にまとめた好著であるとし、「カイゼンとは、問題そのものを取り除くこと(Correction)ではなく、再発しないように問題が発生する真の原因を取り除くこと(Corrective Action)」と強調しました。

インターネットでのライブ配信にて質の高い成長に向けたカイゼンを議論

続いて、JICA研究所の大野泉研究所長がモデレーターを務めた公開討論が行われ、同書の編者・共著者らが参加しました。

カイゼンによる企業の能力向上について、10章を執筆したフェリペ・ラゲデ・ソウサ氏はカイゼンが生産性だけでなく製品・工程のイノベーションにつながったブラジルの事例を、13章を執筆したミリアン・タマヤオ氏はフィリピンでの中小零細企業への導入事例を紹介しました。また、カイゼンによるグローバル・バリュー・チェーンへの参入について、9章を執筆したJICA横浜センターの石亀敬治氏は、JICAが支援した南アフリカの自動車部品企業の事例を紹介しました。

さらに、カイゼンの途上国での普及という観点から、6章を執筆したJICAの本間徹国際協力専門員よりマレーシア、インドネシア、ミャンマーでの政府主導・企業主導の普及パターンについて、7章を執筆したJICAアフリカ部の鈴木桃子氏と青年海外協力隊事務局の坂巻絵吏子氏より南アフリカとエチオピアでのカイゼンを活用した学生への職業訓練について、さらに5章を執筆したJICA研究所の神公明氏よりカイゼンによるエチオピアの労働者の意識変革と職場外への波及効果が紹介されました。各国の状況を比較しながら、カイゼン活動を継続するためのモチベーションの重要性やeラーニングの活用についてなど、幅広いトピックで議論を行いました。

終わりに、JICA研究所の細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザーが総括を行い、「昨今は企業が環境問題や社会課題の解決に投資する“ステークホルダー資本主義”が注目されており、カイゼンは、品質・生産性向上のみならず、労働者の意識・能力向上や労働環境の改善をもたらし、ひいては労働者、サプライヤー、消費者など、全ての関係者や企業の社会的責任にも資するはず」と述べ、セミナーを締めくくりました。

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