『Workers, Managers, and Productivity: Kaizen in Developing Countries』
開発途上国がグローバル・バリュー・チェーンに参入し、国際市場で成功するためには、生産性と品質が鍵となる重要な要素です。品質・生産性の向上を目指す「カイゼン」は、日本で広く浸透している日本式のマネジメント手法であるものの、途上国における効果についての実証研究は、まだ十分に行われているとは言えません。
オープンアクセス書籍である本書は、カイゼンがどのように途上国に導入され、浸透していったかを明らかにし、大企業、中小企業、零細企業におけるカイゼンの効果を検証しています。産業政策と企業の能力向上にカイゼンがどのように貢献し、学習する社会(Learning society)の形成と所得格差の解消にどのように影響を与えたか、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、ベトナム、フィリピン、ブラジル、メキシコ、エチオピア、ガーナ、南アフリカでの事例研究を用いて論じています。
カイゼンは機械設備への投資ではなく、コスト削減や、生産プロセスにおけるムダ、ムリ、ムラを減らすことによって生産性の向上を目指すものです。これにより労働者の安全性を高め、環境への負荷を削減することにもつながるため、「カイゼンは、品質、生産性、安全性、持続性を向上させるものとして、より包括的に理解されるべき」と本書は論じています。
同書籍は、JICA研究所の研究プロジェクト「GDN/JICA-RI共同研究『開発のための質と生産性向上~KAIZEN事例分析~』」の成果として発刊されました。JICA研究所の細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザーと島田剛招聘研究員(明治大学准教授)が編者を務めたほか、執筆者として、JICA研究所の神公明、JICA産業開発部の片井啓司、アフリカ部の鈴木桃子、青年海外協力隊事務局の坂巻絵吏子、横浜センターの石亀敬治、本間徹国際協力専門員が参加しています。
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