人間の安全保障学会第10回研究大会で研究成果を発表—武藤上席研究員ら

2020.11.30

2020年11月28、29日に、中部大学の主催で「人間の安全保障学会(Japan Association for Human Security Studies: JAHSS)第10回研究大会」がオンラインで開催され、人間の安全保障分野の研究者や実務者が参加しました。今回のテーマは、「気候変動と人間の安全保障—デジタルアースアプローチ」。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の平和構築と人道支援領域の研究員らも参加し、研究成果を発表しました。

「人間の安全保障、気候変動およびSDGs(Human Security, Climate Change and SDGs)」がテーマのセッションでは、国連事務総長特別顧問(人間の安全保障担当)の高須幸雄氏より、日本語書籍『全国データ SDGsと日本 誰も取り残されないための人間の安全保障指標』の英語版『SDGs and Japan: Human Security Indicators for Leaving No One Behind』が紹介されました。高須氏が翻訳監修、JICA緒方研究所が翻訳を担当し、2020年11月に発刊されたこの英語版は、人々の生命、生活、尊厳についての指標に加え、取り残されがちな特定のグループの人々について定性的に分析することで、日本の都道府県別に人間の安全保障上の課題を可視化したものです。高須氏は、本書は日本での人間の安全保障の実践における一つの皮切りとなったと強調しました。同書籍は、ページ下のリンクからダウンロードできます。

研究大会2日目には、同志社大学の西川由紀子教授が座長を務めたセッション「現代社会における人間の安全保障の文脈化(Contextualizing Human Security in Today's World)」が開催され、人間の安全保障に関連するJICAの活動や研究をまとめて紹介しました。JICA緒方研究所のゴメズ・オスカル客員研究員は、2020年12月に発刊された『人間開発報告書2020』のための国連開発計画(UNDP)とJICAによる共同研究の概要を発表。また、武藤亜子上席研究員は、人間の安全保障についてのJICAの立場を、現在の世界情勢の文脈において発表しました。さらに、石川幸子JICA国際協力専門員は、現在実施中のJICA緒方研究所の研究プロジェクト「東アジアにおける人間の安全保障とエンパワメントの実践」を紹介するとともに、このプロジェクトのテーマと研究手法が現在の世界的な公衆衛生上の緊急事態に適応したものになっているかについて発表しました。人間の安全保障という概念や、安全保障の概念全体の中で開発によるダウンサイドリスクの重大さを再検討することについて活発な意見交換が行われ、研究と実務の間を橋渡しするセッションとなりました。

今日における人間の安全保障上の伝統的・非伝統的脅威を示した図 ©JICA

さらに、セッション「気候変動と人間の安全保障への影響(Climate Change and its Impact on Human Security)」では、リセット・ロビレス研究員が気候変動によって引き起こされる人の移動を人間の安全保障上の問題として考察した論文について発表しました。同論文は、2013年の台風ヨランダに関する自身の以前の研究に基づき、強制移住を理解する手段として、国内避難民(IDPs)のための保護とエンパワメントに向けた戦略を再考したものです。

2日間の研究大会は、新型コロナウイルス感染症の制約にもかかわらず盛況のうちに終わりました。同研究大会は人間の安全保障に関してタイムリーかつ重要な知見や概念を共有するプラットフォームであり、JICA緒方研究所の研究成果を共有する貴重な機会となりました。

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