アジアの社会インフラへのニーズを政策対話で議論—広田客員研究員

2021.02.28

2021年2月18、19の両日、アジア開発銀行研究所・東京大学公共政策大学院・インドネシア大学共催の政策対話「Policy Dialogue on Infrastructure, Technology, and Finance for Sustainable and Inclusive Development in Asia Beyond the Pandemic(アジアにおけるパンデミックを超えた持続可能で包括的な開発のためのインフラ、テクノロジーおよび金融に関する政策対話)」がオンラインで開催され、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の広田幸紀客員研究員(埼玉大学教授)が参加しました。

この政策対話は、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)のパンデミックによって質の高い社会インフラの重要性が再認識される中、強靭かつ包摂的で持続可能性な社会インフラの構築とサービスの提供に向けてどのような政策が必要か、アジアの政策担当者や専門家、研究者らが議論し、各国の政策決定に生かすことを目的に開催されたものです。

広田客員研究員は、18日のセッション1「Needs for Social Infrastructure in Asia(アジアの社会インフラニーズ)」で、インドネシア大学経済学部経済社会研究所のテグー・ダルタント上席研究員とアジア開発銀行のラナ・ハサン経済調査・地域協力局ディレクターとともにパネリストとして登壇しました。

まず、2012~2013年までJICA緒方研究所に研究員として在籍し、現在はインドネシア大学で貧困・開発をテーマに研究を行っているダルタント上席研究員が登壇。コロナのパンデミックでアジア諸国の社会インフラは大きな打撃を受けたとし、その影響を教育・医療・公営住宅・官庁舎の4つの面から解説し、「アジア全体でGDP0.5~1%相当の復興への投資が必要になると見込まれるが、インドネシアでは社会インフラへの既存の投資額と必要投資額のギャップが大きい」と述べました。

インドネシア大学のテグー・ダルタント上席研究員

また、広田客員研究員は、ダルタント教授らと実施したJICA緒方研究所の研究プロジェクト「アジアのインフラ需要推計にかかる研究」の成果に基づいて発表しました。マクロ・ミクロの両アプローチをもとに、インフラの新規建設・維持管理・更新・復旧改善の4つの分野ごとに需要推計を行った結果、日本では更新や復旧改善に年間10.3~13.5兆円の大きな需要があり、これらの需要に応えるためには現在の支出水準を引き上げる必要性が明らかになったと報告。今後の課題として、資金の確保、維持管理費用の削減につながるような技術開発、強靭性や施設の余裕、包摂性を考慮した長期計画の3点を挙げました。さらにコロナによる社会インフラへの影響として、デジタル化やAIの加速、外的ショックに対する耐性強化の動きを挙げ、今後は特に医療インフラの強靭性を高めていくことが求められると指摘しました。例えば大規模な感染症拡大時には政府・民間の研修施設を軽症や無症状感染者の宿泊に利用するなどの柔軟なメカニズムを検討することが望まれると発言しました。

JICA緒方研究所の広田幸紀客員研究員

続く質疑応答で社会インフラへの限られたリソースをどう活用すべきか問われた広田客員研究員は、「『質の高いインフラ投資』でも提唱されているライフサイクルコストという考え方に基づき、費用効率を上げることが重要」と回答し、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)へ関心が高まっていることは良い機会であり、社会インフラ投資に民間資金を動員するためのPublic-Private-Partnership(PPP)の一層の活用が望まれると述べました。

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