コロナ禍でアジア4ヵ国の人々はどう行動したか?齋藤主任研究員と駒澤研究員が2021年日本国際保健医療学会学術大会で発表

2021.12.15

2021年11月27、28日の2日間、第36回日本国際保健医療学会学術大会(主催:国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)が、「パンデミック後の持続可能な保健医療に向けた国際協力」をテーマにオンラインで開催されました。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の齋藤聖子主任研究員と駒澤牧子研究員が参加し、それぞれ「アジア4か国におけるCOVID-19禍の保健行動:ワクチンの接種動向と接種意向に関する分析」と「アジア4か国におけるCOVID-19禍の保健行動:保健施設アクセスの低下とその関連要因」の演題で発表しました。これらはJICA緒方研究所が実施中の研究「COVID-19研究:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジと強靭な社会に向けて」の一環です。

今回の発表は、JICA社会基盤部が収集したタイ、インドネシア、フィリピン、ベトナムの4ヵ国の都市住民調査(計4,072人)のデータを用いて再分析した結果によるものです。

齋藤主任研究員は、アジア4ヵ国のワクチン接種意向の傾向とその背景について分析結果を発表しました。2021年4~5月時点での分析対象者の接種率は、インドネシアが63%と高いですが、他の3ヵ国はおおむね30%以下の低水準でした。しかし、これら3ヵ国では接種を希望する人が9割以上となっており、ワクチン接種に対する肯定的意向が強い傾向があるといえます。さらに、新型コロナウイルスに関する考え方と接種意向との関連について全体的傾向を分析した結果、「全ての年齢層の人々が新型コロナウイルスにより死亡している」「新型コロナウイルスにより世界中が深刻な危機に陥っている」「現在のパンデミックの経済は2008年経済危機より状況が悪い」と考えている人は接種意向が強いことが分かり、健康リスクだけでなく経済への危機意識が接種意向に関連している可能性が示唆されました。

駒澤研究員の研究では、アジア4ヵ国の都市住民の8割以上がCOVID-19の影響で保健施設へのアクセス頻度が低下していること、その理由として約7割の人が「保健施設での感染の恐れ」を挙げていることが分かりました。特に、実際のアクセス頻度の低下は、若い層や収入が減少している人で顕著でした。また、公衆衛生的行動として、マスクの着用、外出の自粛、混雑する公的スペースの回避などを実践している人は6~8割であることや、それらの公衆衛生的行動や地方政府への信頼なども保健施設へのアクセス頻度の低下に関連していることが分かりました。駒澤研究員はこれらの結果から、各国政府は保健施設における感染リスクの低減を徹底した上で、それを踏まえた安全確保の実施状況について周知を図り、さらに若い世代や経済的困窮者への支援を強化する必要があることを指摘しました。

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