開発途上国の大学教員の海外留学がもたらすインパクトとは?日本比較教育学会で萱島シニア・リサーチ・アドバイザーらが発表

2022.08.16

2022年6月24~26日の3日間、日本比較教育学会第58回大会がオンラインで開催され、25日の自由研究発表セッションでは、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の萱島信子シニア・リサーチ・アドバイザーと上智大学グローバル教育センターの梅宮直樹教授が「インドネシアの大学教員の海外留学のインパクト」と題する発表を行いました。約40人の学会員が参加し、質疑応答も行われました。

JICA緒方研究所の萱島信子シニア・リサーチ・アドバイザーと上智大学グローバル教育センターの梅宮直樹教授が発表

これは、JICA緒方研究所が日本や海外の研究者とともに実施している研究プロジェクト「途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究—アセアンの主要大学の教員の海外留学経験をもとに—」の研究成果の一部を発表したものです。同研究プロジェクトでは、知識基盤形成の拠点となり指導的人材の育成に重要な役割を果たす開発途上国の主要な大学を取り上げ、その大学教員の海外留学がどのようなインパクトをもたらすのかについて実証研究を行っています。開発途上国の大学の発展における教員の役割については、Altbach(2003)が世界の高等教育セクターの中心にある欧米の大学との関係で開発途上国の大学を周辺に位置づけながら分析をした研究などが知られていますが、アジアの大学は近年目覚ましい発展を遂げており、大学教員、特に海外留学をした教員の経験がアジアの大学の発展にどのように貢献してきたのかを明らかにすることを目指しています。

萱島シニア・リサーチ・アドバイザーと梅宮教授はこれまで、東南アジア4ヵ国の10大学を対象とする同プロジェクトにおいて、インドネシアの2大学(バンドン工科大学とガジャマダ大学)を対象に、文献調査と基礎調査により大学の開設から現在までの発展と教員の留学についての基礎データを収集した上で、対象大学の教員への質問紙調査により海外留学履歴と留学のインパクトに関する意識についての量的調査を行ってきました。今回の発表では、同調査で収集したデータの分析結果として、対象大学の発展過程において教員の海外留学先が変遷し、また、近年においてはより多様な国々に留学をするようになっていることに加え、インドネシア国内で修士・博士号を取得した教員が増えていること、非留学者と留学者との比較では、留学経験が意識の変容、知識技能の獲得、教育・研究・大学運営活動の遂行に多くの点で正のインパクトを及ぼしていることなどを報告しました。

質疑応答では、参加者から、留学先国の違いによる帰国後の教授法の違い、工科系学部と人文系学部の違い、留学中の使用言語と帰国後の職場での使用言語との関係性などについて質問が挙がり、幅広い議論がなされました。これらの点を含め、今後も対象大学の教員や高等教育関係者へのインタビュー調査の中で検証・分析を進めていく予定です。

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