留学インパクト研究チームが北米比較・国際教育学会2023で中間成果を発表

2023.03.07

世界の教育分野の研究者が集う「北米比較・国際教育学会(Comparative and International Education Society:CIES)」第67回年次大会が、2023年2月14日から22日にハイブリッド形式で開催されました。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)からは、研究プロジェクト「途上国における海外留学のインパクトに関する実証研究-アセアンの主要大学の教員の海外留学経験をもとに-」の研究チームが、成果の中間発表をオンラインで行いました。

オンラインで発表する研究プロジェクトのメンバーら

この研究プロジェクトは、2018年から日本とアセアンなどの研究者による研究チームを組織して実施しています。カンボジア、インドネシア、マレーシア、ベトナムのトップレベルの10大学において質的量的データを収集し、教員の海外留学経験がその後の教員の活動にどのような影響を及ぼし、さらに大学の発展にどのように貢献したのかを実証的に明らかにしようとしています。質問紙調査の時期がCOVID-19の感染拡大の時期と重なり、データ収集は困難を極めましたが、2022年には10大学から3,300人の教員のサンプルが収集されました。本大会のパネルセッションで、その初期的な分析結果を報告しました。

パネルセッションは、共立女子大学のSarah R. Asada准教授の司会のもと、JICA緒方研究所の萱島信子シニア・リサーチ・アドバイザーが研究プロジェクトの概要やデータ収集の状況を説明。名古屋大学の芦田明美准教授がカンボジア、上智大学の梅宮直樹教授がインドネシア、JICA緒方研究所の杉村美紀客員研究員(上智大学教授)がマレーシア、Jung Hyun Jasmine Ryu JICA専門家(ベトナムの日越大学に派遣)がベトナムの事例をそれぞれ報告しました。国別事例では、各国の主導的大学での質問紙調査とインタビュー調査のデータから、留学経験のある教員と留学経験のない教員を比較し、海外もしくは国内の博士課程/修士課程就学が、その後の教員のさまざまな活動にどのようなインパクトを与えているかが分析されています。

大学における教員の主要な活動である教育、研究、社会貢献、大学運営についてみると、教員の留学経験は、カンボジアでは研究活動において、インドネシアでは教育や研究活動において、マレーシアでは教育活動において、ベトナムでは教育、研究、大学運営活動において、特に顕著なインパクトを与えていることが報告されました。

4か国の発表から、全般的に教員の海外留学が特に教育や研究活動にポジティブなインパクトを与えている一方で、高等教育の歴史や発展レベル、高等教育政策やその環境は対象4か国で異なり、国ごとのインパクトの差異も示されました。また、大学院教育が発展し、国内での大学教員養成が進んでいる国が多いことや、教員の留学経験は教員の国際的な活動につながっていることなども語られました。

参加者からは、留学によるネガティブなインパクトはないのか、留学後の頭脳流出と頭脳循環をどのようにとらえるべきか、社会貢献や大学運営の活動に対する留学インパクトが比較的小さいのはなぜか、今後の研究成果とりまとめはどのような予定か、などの質問が寄せられ、発表者と参加者の間で熱心な議論が行われました。

今回の発表は、収集データの初期的な分析結果の紹介であり、本パネルセッションでの議論も踏まえて、さらに分析作業が進められる予定です。

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