ザンビアで大国との二国間関係に影響を及ぼす要因について情報収集-高原前研究所長ら

2023.04.05

JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の高原明生研究所長(当時)、北野尚宏客員研究員(早稲田大学教授)、麻田玲研究員、今井夏子リサーチ・オフィサーが、2023年2月20日から27日にかけて研究プロジェクト「インド太平洋の平和と開発の新ダイナミクス-途上国の中国への対処-」の一環でザンビアと南アフリカに出張しました。

この研究は、中国の台頭に伴い、地政学的重要性を高めるインド太平洋諸国の外交政策における自律性に焦点を当て、これら諸国と中国との二国間関係に影響を及ぼす国内的・国際的要因を明らかにすることが目的です。対象国は、フィリピン、ラオス、スリランカ、バングラデシュ、ウズベキスタン、セルビア、ザンビアの7ヵ国です。

研究プロジェクトメンバーとザンビアのカッパーベルト州ンドラ市商工会議所のスタッフら

ザンビアと中国、米国との関係は

1964年に独立したザンビアは、内戦や近隣諸国との紛争を経験することなく平和的な国家を構築してきました。しかし、1965年に隣国のローデシア共和国が人種差別政策を理由に国際社会から経済封鎖を受けたため、同国を経由した銅鉱石の輸出が不可能となり、ザンビアは経済的苦境に陥りました。その窮地を救ったのが、1976年に開通したザンビアとタンザニアを結ぶタンザン鉄道で、建設を支援したのが中国でした。今日まで続くザンビアと中国の二国間関係の土台はこの時期に形成されたと言えるでしょう。

両国間の協力関係が強化され、中国はザンビアにとって最大の債権者となったものの、2020年11月にザンビアは債務不履行となりました。2021年8月の大統領選挙による政権交代を経て、2022年8月からは中国も参加し、債務再編の交渉が行なわれています。他方、現政権は米国とも良好な関係を構築しようとしており、2023年3月に開催される民主主義サミットの共催国となりました。

こうした状況下、ザンビアではどのような要素が作用し、中国や米国といった大国との関係が構築されているのでしょうか。この点を明らかにするため、ザンビアの財務省、鉱山・鉱物開発省、住居インフラ開発省、商工会議所、在ザンビアおよび在南アフリカ日本大使館、USAID(アメリカ国際開発庁)のザンビア事務所、また南アフリカを拠点にアフリカ全体を管轄するJETRO事務所やスタンダード銀行のリサーチ部門と意見交換を行いました。

今回の調査から、ザンビアにおける国内政治と経済開発においては、米中関係の要素が複合的に作用していることが明らかとなりました。前大統領は中国からのインフラ整備支援を積極的に受け入れたものの債務が膨張。困難な生活を強いられた一般国民が不満を高めた結果、2021年の大統領選挙で政権が交代しました。長年にわたり野党党首であった現大統領が民主的に選出された過程や、2022年3月に開催された国連総会でのロシア非難決議にザンビアが賛成した事実を米国は支持し、現政権との連携を強化する構えです。

他方、債務問題の解決を最優先事項とする現大統領が、国連、IMF、世界銀行、米国といったいわゆる西側陣営と積極的に交渉するアプローチに対し、野党からは中国との二国間関係が悪化するのではと懸念する声も上がるなど、今後もザンビアの対大国政策を注視する重要性は高いと言えるでしょう。分析結果は今後論文としてまとめられ、2023年度に発刊される予定です。

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