JICAと世界銀行、それぞれのアプローチ:より良い教育を求めて
2011.06.20
世銀の教育専門家を迎えセミナーを開催
Elizabeth King氏
JICA研究所は2011年6月3日、世界銀行人間開発部教育担当局長Elizabeth King氏と、同主任教育エコノミストHarry Patrinos氏を迎え、セミナーを開催しました。世銀が打ち出した最新の教育戦略や実施中の教育プロジェクトについて学び、また両機関の交流の場を提供することが目的です。セミナーには、JICA研究所細野昭雄所長、加藤宏副所長、結城貴子他研究員や、JICA本部教育関連プロジェクトの担当職員、そして国内有数の大学の研究者らが出席。さらに、インドネシアやエチオピアのJICAプロジェクト担当者がテレビ会議システムを通して参加しました。JICA研究所の冒頭挨拶後、King氏により、世銀が今春新たに発表した教育アプローチと目標をまとめた「Education Strategy 2020(教育戦略2020)」の概要が説明されました。
King氏によると、教育および教育関連の開発政策は、貧困国における小学校の就学率向上や中退率の急速な低下など、過去10年間である一定の成果を上げています。しかしこれは、必ずしも質の高い教育の普及を意味するものではありません。King氏は「教育は受身ではなく参加型の活動だ。」と訴え、校舎建設などのインフラ支援とは異なる、新たなアプローチが必要であると示唆しました。「Education Strategy 2020」で世銀は、迅速な支援、効果的な支援、万人のための支援という、アカウンタビリティ(説明責任)と成果主義に基づいた3つのアクションを掲げています。
Harry Patrinos氏
この新たな方針のもと、世銀は「Making Schools Work: New Evidence on Accountability Reforms」という書籍を発刊しました。著者の一人であるPatrinos氏によると、この本は、(サービス業的な視点から考える場合、)従来の教育政策が成績の向上といったサービスを提供できていないと指摘、各国で実施されている学校改革プログラムの事例の数々を検証しています。Patrinos氏はさらに、効果的な学校運営には自治権、評価、そしてアカウンタビリティの強化が不可欠であると強調しました。
JICAはこれまで、ニジェールの「みんなの学校」プロジェクト [ニューズレターNo.22へ] や、イエメンの女子教育の例 [関連記事へ] など、様々な教育改革プログラムを途上国で実施してきました。JICAは世銀と異なるアプローチや理論を持って活動をしていますが、研究所の小塚英治リサーチ・アソシエイト(RA)や本田俊一郎RA、ジャカルタ駐在の増田 知子JICA専門家は、世銀の新たな教育政策を評価し、プロジェクトや研究内容についてコメントを寄せました。
新たな教育評価システム確立へ向け、さらなる連携を模索
世銀は翌週6月6日から3日間にわたり、上記「Education Strategy 2020」の構想にのっとり考案された評価・ベンチマーク設定プログラム立ち上げのため、インドネシアのバリで会合を開きました。
SABER(Systems Assessment and Benchmarking for Education Results:教育のベンチマークに係る取り組み)と呼ばれるこのプログラムは、どのような教育政策が効果的な学習成果をもたらすのか、ということを世界レベルで検証するために必要なデータや情報を提供しようとする取り組みです。各国の教育システムと関連政策領域(評価、教育予算、自治権、アカウンタビリティなど)を国際基準と照らし合わせて詳細に調査・比較し、全ての子供たちの学習達成度向上のため、包括的な知識基盤を確立することを目指しています。
会議では、東アジア14カ国の政策立案者や、ユネスコ、OECD、アジア開発銀行、JICAなど世界機関、そしてコロンビア、韓国、ポーランドなどからの教育専門家が出席する中、SABERを用いた東アジアの検証結果が初披露されました。その後プログラムの精度をさらに高めようと幅広い意見が出されましたが、参加者の反応は概ね良好でした。
会議セッションの一つで議長を務めた結城研究員は次のように評価します。「元来複雑な教育政策を、単純だが包括的な方法で比較検討できるSABERは、便利なツールになりうる。しかし現時点では、解析範囲が主に国家レベルの政策に留まっており、JICAのような援助機関が途上国の地方分権化政策の下、地域レベルの教育改革を支援する際に活用するには、十分とは言えない(SABERの分析範囲は地域レベルの個々の状況に対応していないため)。」結城研究員はさらに、「JICAは現場で培った経験や知識に基づき、SABERプログラムの改善に必要な分析指標を提案することで、プログラムの発展に貢献できる。」と説明します。
現在JICA研究所と本部の人間開発部は、SABERプログラムに関する共同研究プロジェクト立ち上げについて、世銀と協議中です。「新しいシステムの設計に早い段階から関わることで有益な情報を手に入れることができ、またそこで得た知識をパートナー国での実務に活かすことができる。」と結城研究員は大きな期待を寄せています。
関連研究領域:援助戦略
開催日時:2011年6月3日(金)
開催場所:JICA本部
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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