気候変動と効果的な資金の活用に向けて:COP20でJICA研究所がサイドイベントを主催
2015.01.08
国連気候変動枠組条約第20回締約国会議(COP20)が、12月1日から12日まで、ペルーの首都リマで開催されました。期間中はさまざまなサイドイベントが開催され、気候変動緩和策や適応策に関する意見や情報が活発に交換されました。JICA研究所からは須藤智徳主任研究員が出席し、会場内に設置された日本パビリオンで、都市化や気候変動に必要な資金をテーマとした2つのサイドイベントを主催しました。
「都市化、気候変動とファイナンス」(12月5日15:00~16:30)
世界では急速な都市化が進んでいます。国連によれば、2050年までに世界人口の約70%が都市部に居住し、約90%の経済活動が都市に集中するといわれています。無計画な人口や経済の成長は、エネルギーの大量消費、交通渋滞や環境劣化など、都市部における深刻な問題を招く恐れがあります。本イベントは「低炭素で気候変動に強い都市」の実現をテーマとし、その課題と解決方法について、実務的かつ現実的な議論を行いました。イベントには、コロンビア大学、マレーシア工科大学、世界資源研究所(WRI)、フランス開発援助庁(AFD)、経済協力開発機構(OECD)の専門家がパネリストとして参加しました。
須藤主任研究員
イベントでは、まず須藤主任研究員が、都市人口やエネルギー消費データ等を示しつつ、気候変動に強い都市を実現する政策策定や、開発資金の活用に関する問題提起を行いました。その上で、JICAのバンコク都気候変動マスタープラン形成支援事業や、インドにおける低炭素インフラ開発支援、アジアの都市における適応・防災対策の事例等を紹介し、適切なマスタープランの策定とその実施、関係者間の連携、都市自身による資金調達能力強化等の重要性を示しました。
パネリストからは、OECDやAFDなど各機関による取組の方針や事例が示されたほか、マレーシアの都市開発や交通インフラの整備など、具体的な経験が共有されました。これを踏まえ、登壇者の間では、科学的根拠に基づく政策立案の必要性、民間連携の促進、民間資金調達が進む中での公的資金の果たすべき役割などについて、活発な意見交換が行われました。
本イベントの開催報告については、日本パビリオンのページからも参照することができます。
本イベントにて発表された資料は、本記事の最後にある資料リンクからダウンロードできます。
「気候変動ファイナンスと開発金融機関の役割」(12月6日13:00~14:30)
途上国の気候変動対策を支援するため、様々な基金や資金が準備されており、その総額は2020年には2000億ドルにも上るとされます。気候変動対策と開発の両立を達成するには、この資金を有効に活用することが必要です。そのためには、開発金融機関のこれまでの経験と教訓を、今後の気候変動対策に活かしていくことが鍵となります。本イベントは、ドイツ復興金融公庫(KfW)、フランス開発援助庁(AFD)、中米開発銀行(CAF)、世界資源研究所(WRI)、経済協力開発機構(OECD)、地球環境戦略研究機関(IGES)、緑の気候基金事務局(GCF)から専門家をパネリストに迎え、開発金融機関の経験からの有益な教訓の特定と、これを気候変動ファイナンスに応用する際の課題と機会について議論を行ないました。
セッションでは、冒頭須藤主任研究員が、気候変動対策資金ニーズと資金フローのデータを示しつつ問題提起を行なったうえで、JICAの海外投融資による中南米省エネファンドへの出資案件や災害復旧スタンドバイ借款の事例を紹介し、開発における気候変動の主流化とコベネフィットの創出、途上国のオーナーシップ、公的資金を触媒とした多様な資金の動員の重要性を指摘しました。
登壇したパネリストは、各機関の気候変動分野における支援方針や、支援の具体例などを示し、そこから得られた教訓を共有しました。その中では、スピードの重視、高い適応効果が見込まれる案件への融資が鍵となること、融資に伴うコストへの配慮の必要性、成果重視の融資の重要性などが指摘されました。
須藤主任研究員は、研究所が主催したサイドイベントのほか、インドネシア政府が主催したサイドイベント「グリーン成長のためのファイナンスの主流化(Mainstreaming Green Financing)」にも登壇しました。インドネシアは、2020年までに自己努力で自然体ケース(Business as usual)比26%、国際協力を得て41%の温室効果ガス削減を表明しています。適切な経済成長を維持しつつこの削減目標を達成するため、インドネシア財務省は財政的見地から、公的気候変動資金の適正活用に取り組みを行なっています。本イベントでは、インドネシア財務省から、同国内の気候変動資金フローの概要、国家レベル及び地方レベルでの予算への気候変動タグ付、2015-2020年のグリーン計画と予算戦略に関する紹介が行われました。須藤主任研究員はパネリストとして登壇し、グリーン成長研究の成果に言及しつつ、気候資金動員のための環境整備、資金特性を踏まえた多様な資金調達と公的資金の役割について、議論しました。
本イベントの開催報告については、日本パビリオンのページからも参照することができます。
本イベントにて発表された資料は、本記事の最後にある資料リンクからダウンロードできます。
『イベントの資料リンク』
「都市化、気候変動とファイナンス」(12月5日15:00~16:30)
Dr. Tomonori Sudo, Senior Research Fellow, JICA Research Institute
Dr. Radley Horton, Associate Research Scientist, University of Columbia /NASA Goddard Institute for Space Studies
Professor Chin Siong Ho, Faculty of Built Environment, Universiti Teknologi Malaysia (UTM)
Mr. Hervé Breton, Senior advisor, Climate Change Division, Agence Française de Développement (AFD)
Dr. Benoit Lefevre, Director, Energy & Climate, WRI Ross Center for Sustainable Cities - EMBARQ World Resource Institute (WRI)
Dr. Jan Corfee-Morlot, Head - Climate, Environment and Development Unit, Development Co-operation Directorate, Organisation for Economic Development and Cooperation (OECD)
「気候変動ファイナンスと開発金融機関の役割」(12月6日13:00~14:30)
Dr. Tomonori Sudo, Senior Research Fellow, JICA Research Institute
Ms. Katrin Enting, Sector Economist, Competence Center for Environment and Climate, KfW Development Bank
Ms. Ophélie Risler Chef de Projet, Agence Française de Développement (AFD)
Ms. Stephanie Ockenden, Economist/Policy Analyst, Climate Finance and Green Growth, Development Co-operation Directorate, OECD
Mr. Tao Wang, Director Mitigation and Adaptation, Green Climate Fund
Dr. Yuqing Ariel Yu, Task Manager (Climate Finance); Senior Policy Researcher, Institute for Global Environmental Strategies (IGES)
セッションのパネリスト
開催日時:2014年12月1日(月)~2014年12月12日(金)
開催場所:ペルー、リマ
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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