JICA緒方研究所

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「二国間援助機関による人道危機対応の比較研究」第1回執筆者会合を開催

2015年8月13日

近年、武力紛争、大規模自然災害、感染症の爆発的流行等の人道支援を必要とする危機的な状況(人道危機)が深刻化・複雑化し、支援に対するニーズや形態、携わる関係者の多様化等、国際的な人道支援は急速に変化しています。一方で、緊急支援、復旧・復興、開発・予防(防災、紛争再発防止)が「コンティニュアム(continuum)」として(いわゆるシームレスに)実施されるために、戦略、連携、資金のギャップをどう解消していくかについて様々な議論・取り組みがなされているところです。

 

JICAが南スーダンに建設した公共の水場
JICAが南スーダンに建設した公共の水場
(写真:久野真一/JICA)

人道危機対応を巡るこのような国際的な状況に鑑み、JICA研究所は本年初め、各国が人道危機にどのように対応しているのか比較分析することを意図して、共同研究「二国間援助機関による人道危機対応の比較研究」を立ち上げました。この研究の中心となる事例研究(フェーズ2)のキックオフとして、外部研究者を交えた第1回執筆者会合が2015年7月29日、JICA市ヶ谷ビルで開催されました。国連等国際機関による支援の在り方についての研究はこれまでもなされてきましたが、二国間援助(機関)に焦点を当てたものは少なく、本研究はこの分野での貢献を目指しています。

 

冒頭あいさつに立った畝伊智朗JICA研究所所長は、「コンティニュアムを、現場でどのように実現するか、実務者としても悩んできた。JICAだけでなく、他の二国間援助機関も同様の課題に直面している。援助の場で適用可能な研究を目指すとともに、2016年にトルコのイスタンブールで開かれる国連世界人道サミットにも議論の材料を提供したい」と述べました。

 

研究代表は、長有紀枝立教大学教授(NPO「難民を助ける会」理事長)と、花谷厚JICA研究所上席研究員(元JICA南スーダン事務所長)です。取り上げる二国間援助国(機関)は、米国(USAID)、英国(DFID)、欧州連合(欧州委員会人道援助局(ECHO)と開発協力総局(DEVCO))、オーストラリア(旧AusAID)、日本(JICA、外務省)等を予定しています。対象事例としては、災害起因と紛争起因のそれぞれに注目し、人道危機に対する国際的な対応で転換点となったスマトラ沖大地震・インド洋津波、現在も危機が進行中のシリアや南スーダンなどを取り上げる予定です。

 

会合では、コンティニュアムの多義性やコンテクスト依存性(ケースにより状況が大きく異なる)、コンティニュアムと受益者利益の相関関係等について議論が行われましたが、議論を通じて枠組みに対する共通理解が深められました。また、同じ二国間援助機関であっても、ODA予算のほぼ全額の実施にあたるUSAIDやDFIDと、JICAだけでなく他機関・他省庁を含めた支援を行っている日本のODAには異なる点も見られること、各国・各機関が重視している/比較優位を持つ支援があること等が議論され、比較の難しさという課題も見えてきました。議論を通じて、参加者の研究意欲が高められ、現地調査への道筋を立てるために有益な会合となりました。

 

発表を行う花谷上席研究員
発表を行う花谷上席研究員

研究の第1フェーズでは、二国間援助機関や国際機関本部での調査等を実施し、これらの結果が研究所のワーキング・ペーパーとしてまとめられる予定です。第2フェーズでは、2016年3月ごろまでに事例ごとの現地調査を行います。その後、研究成果として学術書籍を出版する予定です。

日時2015年7月29日(水)
場所JICA市ヶ谷ビル



開催情報

開催日時2015年7月29日(水)
開催場所JICA市ヶ谷ビル

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