JICA緒方研究所

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教育などで中東・アフリカの拠点に:スリン・ピッスワン特別招聘研究員がエジプトを訪問

2015年10月13日

前ASEAN事務総長で、JICA研究所特別招聘研究員のスリン・ピッスワン氏が9月26日から29日まで、エジプトを訪れました。高等教育や文化財保護の分野でのJICAによる支援と成果を確認するとともに、「エジプトには、教育などの分野で、中東・アフリカ地域の中核を担ってほしい」と力強いメッセージを送りました。

 

大エジプト博物館保存修復センターを視察するスリン氏(右)
大エジプト博物館保存修復センターを
視察するスリン氏(右)

スリン氏は、イスラム社会の安定と発展における教育の役割を重視しています。今回は、質の高い人材を輩出するためにJICAが設立や研究・教育機材の整備を支援しているアレキサンドリアのエジプト日本科学技術大学(E-JUST:Egypt Japan University of Science and Technology)、文化財の保存修復の技術指導を行っているカイロの大エジプト博物館保存修復センターなどを訪問したほか、アレキサンドリア国立博物館なども視察しました。

 

視察を通じスリン氏は、E-JUSTが中東やアフリカの科学技術分野の研究・教育の拠点となること、そして「"Spirit of Alexandria"の心意気」でアレキサンドリアが学術や産業発展の拠点となることに期待を寄せ、エールを送りました。また「物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさを実現することが科学技術の真の発展である」と、成長の質が大切であることを強調しました。

 

E-JUSTで学生と話すスリン氏(左)
E-JUSTで学生と話すスリン氏(左)

E-JUST理事会議長も務めるFayza Mohamed Aboulnaga国家安全保障会議大統領補佐官らとの協議では、エジプトの教育改革の方向性について意見を交わしました。Aboulnaga氏は、日本の高度経済成長を支えた質や生産性の高い業務に関心を寄せ、プロフェッショナルとしての自覚や規律を養う教育をエジプトでも取り入れたいと発言しました。一方で、成果が現れるまでに長い時間を要する教育を、国家の優先事項とすることの難しさにも触れました。

 

これに対してスリン氏は、教育改革には大統領をはじめとする国のリーダーの強い意思と、実行を継続させるリーダーシップが必要不可欠であると指摘。教育改革の進め方の一案として、モデルとなる学校を立ち上げ、教師や保護者などの関係者を巻き込みながら教育内容や運営手法をパッケージ化させて成功事例を作ることを提案しました。

 

今回のエジプト訪問を通じスリン氏は、日本人が兼ね備えている道徳観や正義感が、社会経済発展に貢献しており、エジプトはこれらを日本の研究・教育機関から学ぶことができるのではないかと繰り返し述べました。さらに、歴史的文化財の宝庫であり観光資源に富み多くの可能性を秘めているエジプトに対して、高等教育や文化財保護の分野で中東・アフリカ地域の中核を担うべきと期待を述べました。

 

スリン氏はまた、Al-Azhar(イスラム教スンニ派エジプト総本山)を訪問し、JICAとエジプトの長年の協力関係を強調。この訪問の様子はイスラム圏各種メディアに取り上げられました。

 

日時2015年9月26日(土) ~ 2015年9月29日(火)



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