JICA緒方研究所

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GDN(Global Development Network)年次総会開催:「開発のための教育」をテーマにJICA研究所がセッションを主催

2016年4月4日

開発途上国の研究能力の開発とネットワーキングを目的としたグローバル・ディベロップメント・ネットワーク(Global Development Network:GDN)の第17回年次総会が、2016年3月17日-18日、ペルーのリマで開催されました。JICA研究所はGDN地域ネットワークの一つであるGDNジャパンの事務局を務めています。今回の年次総会のテーマは「Education for Development: Quality and Inclusion for Changing Global Human Capital Needs」(開発のための教育:グローバル人材への要望の変化に対応するための質と包摂性)」。JICA研究所からは畝伊智朗所長(当時)らが複数のセッションに参加しました。

JICA研究所主催のセッション

3月18日に行われたJICA研究所主催のセッション「The Role of the Local Community in Education for Development: Evidence from Impact Evaluations of School Based Management」では、School Based Management(SBM、住民参加型の学校運営)のインパクト評価分析の結果を基に、教育における地域コミュニティの役割について議論しました。畝所長がモデレーターを務め、国際NGOのInternational Initiative for Impact Evaluation (3ie)のEmmanuel Jimenez事務局長、Moussa Blimpo世界銀行エコノミスト、澤田康幸JICA客員研究員(東京大学教授)、小塚英治広島大学特任准教授(当時、現JICA人間開発部)が発表しました。

Jimenez氏は、途上国におけるSBMおよびCommunity Based Monitoring(CBM、コミュニティによる学校監理)の政策と最近の研究の潮流について紹介し、双方に効果があるものの、CBMの効果がより高いことを指摘しました。Blimpo氏はガンビアでのインパクト評価分析の結果を発表し、資金提供だけでは教育の質を上げることが難しいことに言及しました。小塚氏はJICAが協力を実施しているニジェールの事例を取り上げ、資金提供のみの場合と資金提供に加えて研修介入を行った場合の差を、夜間授業や補完授業の観点から分析し、資金提供に加えて研修介入を行った場合に効果があることを発表しました。澤田氏は学校運営への住民参加を促進するブルキナファソで行われたJICA技術協力プロジェクト「みんなの学校プロジェクト」による学校運営委員会の効果の検証結果について発表しました。この研究では、ランダム化比較実験と人工的フィールド実験(パブリックグッズ(公共財)ゲーム)を活用しました。

国際開発日本賞の受賞者たち

フロアとの活発な質疑応答の後、まとめとしてJimenez氏は「現地事情を最優先すること」、Blimpo氏は「学校は教育の1つの側面にすぎないことへの留意」、小塚氏は「地域社会の能力と社会資本の重要性」を指摘しました。澤田客員研究員は「財政的な持続性を確保する観点でのSBM/CBMと、より広範な費用対効果への考慮が鍵である」と強調しました。

このセッションに先立つ3月17日には、畝所長をモデレーターとして、「2016年国際開発日本賞(開発プロジェクト部門)」のファイナリスト3人による発表セッションが行われました。国際開発日本賞は、開発分野における研究や刷新的な開発プログラムを発掘・助成するために日本政府の資金により授与されています。

インドネシアの企業経営者のGamal Albinsaid氏は、低い健康保険加入数とゴミ問題の両方を解決するために、「Garbage Clinical Insurance(廃棄物回収による医療保険)」を提供する事業を実施していることについて語りました。キルギスでアガカーン財団のプロジェクトを実施しているTalantbek Aldashov氏は、キルギスの山間部で換金作物を栽培し、その販売ルートを確保する事業について説明しました。パキスタンのラジオ局経営者のFakhira Najib氏が、ラジオ番組を活用して教員のクラスルーム運営支援をはじめ、学校に通えない子どもや女子などに教育の機会を作り、教室でその補完的なプログラムを実施することにより、学校教育の質の向上を図る事業について発表しました。選考の結果、パキスタンのNajib氏が1位に選ばれ、畝所長が賞を授与しました。

ニジェールの学校での話し合い

なお、今回の年次総会の誘致を積極的に進めたペルーの教育大臣Jaime Saavedra氏は、2002年の第一回目の国際開発日本賞(開発研究部門)の受賞者です。

畝所長は総会後、「今回のテーマである『開発のための教育』は、JICA研究所がJICAの事業を対象に取り組んできた多数の研究テーマと合致している。その研究成果を著名な研究者が集まるGDN年次総会で発信することができたことは、意義が大きい。とくに住民参加型の学校運営のトピックについては、その分野で世界的潮流を作り出している国内外のさまざまな組織と連携して発表することができた」と話しました。

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