JICA緒方研究所

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片柳研究員、ボスニア・ヘルツェゴビナの土地問題を聞き取り調査

2011年12月7日

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   現地調査中の片柳真理研究員(左から3番目)
片柳真理研究員は10月9日~11月6日、JICA研究所の研究プロジェクト「紛争後の土地・不動産問題—国家建設と経済発展の視点から」の一環としてボスニア・ヘルツェゴビナ(BiH)を訪問しました。この研究プロジェクトでは、アフリカ、アジア、欧州、南米から8カ国の事例を取り上げますが、片柳研究員はBiHを担当しています。今回は、サラエボから東部2、北西部5、北東部3、南部1の自治体を回り、市長や自治体職員、大学教授、農民、帰還民など合計50人をインタビューしました。


聞き取り調査の主なテーマは3つです。


第一に、BiHは難民・国内避難民への不動産返還に関して稀な成功例と言われていますが、その実態をより正確に把握することです。


第二に、土地利用に関する問題の現状をとらえることを目指しました。例えば相続制度によって農地は細分化される傾向にあり、それが農業開発の障害になっていると言われていますが、その実情を確認しようとしました。また、社会主義時代に接収され、公用地となった土地について、現状はどのようになっているのかを調べることも目的でした。


第三に、デイトン合意の文民面の履行を監督する上級代表事務所(OHR)の閉鎖条件の一つともなっている国有財産問題に進捗があるかどうかを確認する狙いがありました。


こうしたテーマに沿って聞き取り調査を終えた片柳研究員は、その主な成果を次のように述べています。


不動産返還について学術研究では主に難民・国内避難民の不動産返還請求委員会による請求の処理が取り上げられています。これは国際社会主導の取り組みでした。その他にも地方自治体による不動産権返還のメカニズムがありましたが、聞き取りによってわかったのは、これらのメカニズムを使わない、国内避難民が自分の住宅を占拠している人と直接話をし、返還にこぎつけるケースがあったということです。


土地所有問題に直面するボスニア・ヘルツェゴビナ
また、帰還する意思のない人は、その不動産の購入を希望する人に委任状を出して不動産返還請求を代行してもらい、返還された不動産をその人に売却するという方法もとられたことがわかりました。


こうした実態は文献研究からはなかなか把握できないものです。土地利用に関しては、小規模農家でも通常2~3カ所の土地を耕作していることが確認でき、サラエボ大学農学部の教授へのインタビューでもそのような農地細分化の状況が開発の障害となっていることが確認できました。


社会主義時代、あるいはそれ以前に接収された土地の問題については、返還・賠償法が未だに制定されていないため、自治体が苦労していることが明らかになりました。将来所有権がどうなるか分からない公有地をとりあえず賃借する自治体もあれば、賃借した後に所有権の紛争が起こると責任を持てないという考えから利用を控える自治体もあります。この問題も開発の大きな障害となっていることは間違いありません。


国有財産の問題は、国レベルでの問題解決に進捗は見られず、むしろ後退している状況です。2009年に上級代表事務所が国有財産目録を作成しており、それをどのように配分するかを国と2つのエンティティで合意しなければならないのですが、一向に話し合いが進みません。そもそも2010年10月の選挙後、新しい閣僚評議会が未だに成立していないため、重要事項はすべて停止状態です。


そのような情勢の中、一方のエンティティであるスルプスカ共和国が国有財産に関する法律を採択し、その違憲審査の訴えが国レベルの憲法裁判所に提起されているところでした。丁度出張中に公判が開かれ、来年1月に判決が予定されています。これもBiHの平和構築に関わる重要な問題で、今後の推移を見守る必要があります。


片柳研究員はBiHの土地・不動産問題について第22回国際開発学会で報告しました。また、今後研究を進め、来年度に再度現地調査を行う予定です。

 

日時2011年10月 9日(日) ~ 2011年11月 6日(日)
場所ボスニア・ヘルツェゴビナ



開催情報

開催日時2011年10月 9日(日)~2011年11月 6日(日)
開催場所ボスニア・ヘルツェゴビナ

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