「紛争後の土地・不動産問題-国家建設と経済発展の視点から」第一回国際ワークショップ開催

2011.10.13

JICA研究所は10月7、8の両日、東京・市谷の研究所内で「紛争後の土地・不動産問題-国家建設と経済発展の視点から」研究プロジェクトの第一回国際ワークショップを開催しました。JICA研究所が今年度立ち上げたこの研究プロジェクトには、ブルンジ、ルワンダ、ウガンダ、コロンビア、東ティモールの事例分析に現地の研究者が参加していますが、今回のワークショップでは、国内外の研究分担者が初めて一堂に会し、各国の状況についての情報交換を行い、事例の比較検討の方向性について話し合いました。このなかでJICA研究所からは武内進一上席研究員がルワンダとブルンジ、片柳真理研究員がボスニア・ヘルツェゴビナの事例についてそれぞれ発表しました。

武内上席研究員は、ルワンダとブルンジの土地問題について、1960年代の内戦によって難民となった人々の帰還、1990年代の内戦時に家を追われた人々の帰還という歴史的な経緯が、土地の権利関係を複雑化している様子を紹介し、ルワンダとブルンジの各政府の対応の違いを指摘しました。中央政府が土地の分配方法を決定し、実行させているルワンダに対し、ブルンジでは土地紛争の解決をそれぞれのコミュニティでの調停に委ねており、このような違いが平和構築にどのような示唆を与えるのかが今後の研究課題です。

片柳研究員は、ボスニア・ヘルツェゴビナで紛争によって家を追われた多くの人々が、紛争前に住んでいた家に戻る権利を守るために国際社会が行った支援について紹介しました。ボスニアではこの他にも、民族主義の強い権力者による少数派の排除や、紛争前の社会主義体制から市場経済への移行に伴う土地・不動産権利関係の整理の問題、国有不動産が未確定である問題など、多様な不動産問題が残されていることが紹介されました。

この研究プロジェクトは、紛争経験国における土地や家屋など不動産を巡る問題に着目し、国家建設と経済発展の視点に位置付けて分析することを目的としたものです。具体的には「紛争後の土地・不動産問題の実態を明らかにする」「紛争後の土地・不動産問題の解決に向けてどのような取り組みがなされているのかを明らかにする」「紛争後の土地・不動産問題とそれに対する取り組みを当該国の国家建設や経済発展のなかに位置付け、それが長期的な平和構築にどのような意味を持つのかを考える」ことを目指します。

武力紛争が勃発すると、それに関連して土地・不動産問題が頻発することはよく知られていますが、住民の日々の暮らし(生計)に直結するこれらの問題は、「人間の安全保障」の観点から重要であるだけでなく、対処を誤れば、社会を不安定化させ、紛争再発にもつながりかねません。武内上席研究員を代表者とする研究グループは、研究プロジェクトを通じて、紛争経験国の土地・不動産問題に対する当該国政府や国際社会の対応を、国家建設と経済発展の観点から評価し、「積極的平和」確立のために何が必要なのかを検討していきます。

また、この研究プロジェクトの一環として、JICA研究所は10月25日、日米合同シンポジウム「平和構築と国家建設のための天然資源管理」を研究所内で開催します。このシンポジウムでは、環境法研究所(ELI)、日本グローバル・インフラストラクチャー財団(GIF)、東京大学による紛争後の天然資源管理についての共同研究の成果発表が行われますが、JICA研究所の研究プロジェクトに参加する研究者が、土地・不動産問題に注目した分析を紹介しながら議論に参加する予定です。

開催情報

開催日時:2011年10月7日(金)~2011年10月8日(土)
開催場所:JICA研究所

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