日米合同シンポジウム「平和構築と国家建設のための天然資源管理」を開催

2011.11.02

日米合同シンポジウム「平和構築と国家建設のための天然資源管理」(主催:JICA研究所、環境法研究所=ELI(米国)、財団法人日本グローバル・インフラストラクチャー研究財団=GIF、東京大学大学院新領域創成科学研究科、東京大学大学院総合文化研究科持続的平和研究センター、助成:国際交流基金日米センター)が10月25日、東京・市谷のJICA研究所で開かれました。

JICA研究所からは、今年立ち上げた「紛争後の土地・不動産問題-国家建設と経済発展の視点から-」研究プロジェクトに関わる研究者が発表したのに対し、ELI‐GIF‐東京大学の共同研究「天然資源を平和構築に活かすために:日米の援助からの教訓」に参加した日本、米国、カナダ、フィリピンの4カ国13人の研究者が講演し、実務者や研究者など総勢約80人の参加者と共に意見を交わしました。

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ルワンダとブルンジの事例を発表する武内進一上席研究員(左)

JICA研究所で「紛争後の土地・不動産問題」研究プロジェクトの代表者を務める武内進一上席研究員はプロジェクトの構想を紹介。「土地・不動産問題には政治的権力関係が反映されていることが多く、政治面の分析や配慮が必要。その解決には、政治と経済の両面において、特定の集団を排除しないようなインクルーシブな政策が必要だ」と述べました。

武内上席研究員はまた、ルワンダとブルンジの2つの事例を比較したこれまでの研究成果を発表しました。ルワンダ、ブルンジ両国は「ツチ、フツなどの民族構成」「紛争によって多くの難民を出したこと」「人口密度の高さと武力対立によって土地問題が発生したこと」などの類似点がある一方、紛争の終わり方をみると、ルワンダでは少数派のツチを中核とする武装勢力が勝利したのに対し、ブルンジではエスニックな権力分有が導入されるなど、紛争後の両国では異なった政治制度が採用されました。

紛争後の難民帰還に伴って起こった土地問題に対して、両国では異なった解決方法が採られました。ルワンダは、ツチの帰還民に対して、フツの居住者が自分の土地の半分を与える「土地分有政策」が実施されました。これはルワンダ政府の政治的安定性の高さを背景にした“トップダウン”といえるやり方ですが、対照的にブルンジは、地域毎の指導者による「調停」を基本にしています。いうならば、権力分有の体制が個人同士の土地所有問題の解決方法にまで“ボトムアップ”の制度として浸透しているのです。武内上席研究員は「ルワンダでは今のところ不満を抑え込むことができている。ブルンジでは調停に時間がかかることもあって、未解決の土地問題が山積している。政治権力は、土地紛争に影響を与えると同時に、その解決方法にも影響を及ぼす」と指摘しました。

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室谷龍太郎RA

JICA研究所からはさらに、室谷龍太郎リサーチ・アソシエイト(RA)が、第一部のセッション2「紛争後の国家建設と経済発展における土地・不動産問題」のコメンテーターとして登壇。「土地・不動産問題は、紛争との因果関係などからしてとても複雑で、外から持ち込んだ制度が予想外の結果を生むこともある。ドナーは、紛争後の国家の多くで『土地法』導入を支援しているが、近代的な法律が必ずしもその国にとって良いとは限らない。“ベストプラクティス”ではなく“ベストフィット”を探す必要がある」と述べました。このほか、アフガニスタンやリベリア、東ティモール、フィリピン・ミンダナオ、スリランカ、南スーダン、カンボジアの平和構築と土地・天然資源管理の関係についての発表があり、参加した実務者・研究者から質問・コメントが寄せられました。

最後に行われたパネル・ディスカッションでは、発表の内容を振り返りながらパネリストを中心に活発な意見交換が行われました。この中で武内上席研究員は「紛争後の平和構築には、紛争当事者間の和平合意を中心にした『上からの平和構築』と、ローカルな紛争への対応や人々の生活再建を中心とする『下からの平和構築』があるが、土地や天然資源管理は人々の生活に直結しているので、『下からの平和構築』を考える上で有効だと感じた。また、平和構築には『上から』と『下から』の両方の要素があるので、人々の生活再建を支援する時にも、国レベルでの政治や政策の問題を考えることが大事だと思う」と述べました。

ムービー・コメンタリー

Mr. Carl Bruch
Senior Attorney and Co-Director of International Programs, Environmental Law Institute, United States

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