『In Pursuit of an African Green Revolution: Views from Rice and Maize Farmers' Fields』

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In Pursuit of an African Green Revolution: Views from Rice and Maize Farmers' Fields

アジアの農業生産性を高め、食糧増産、経済発展の一因となった「緑の革命」。アフリカでも「緑の革命」を起こし、サブサハラ・アフリカの大多数を占める小規模農家の増収、ひいては貧困解決につなげられるのか。本書は、サブサハラ・アフリカでの「緑の革命」について、米とメイズに焦点を当て、取り組み状況と課題、今後の見通しや可能性を、豊富な事例や数字を基に、考察しています。

本書は、JICA研究所が取り組んできた研究プロジェクト「サブサハラ・アフリカにおける米生産拡大実証分析」(研究代表者:大塚啓二郎政策大学大学院教授)の研究成果と、世界銀行のDonald F. Larson氏のメイズの栽培に関する研究成果などをまとめたものです。
大塚教授とLarson氏が編者を務めました

JICAは、2008年の第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)で、アフリカでの米生産を10年間で倍増することを目標としたイニシアティブ「アフリカ稲作振興のための共同体 (CARD: Coalition for African Rice Development)」を発表しました。本書は、このイニシアティブが米の生産性向上や貧困削減にどのように貢献したのかの実証分析を行うことを目的としています。

JICA研究所の畝伊智朗所長は、本書の序文(Foreword)で、「アフリカが今後成長するかどうかは、農業セクターで成果が出せるかどうかにかかっている。農業開発は、サブサハラ・アフリカの貧困削減と食糧安全保障に必要不可欠であり、これらの目的を達成するために、米は大きな可能性を持つ」と述べています。

本書では、アフリカの緑の革命に関して、今までの取り組みから次の3つのことが言えると述べています。(1)米の緑の革命は、アジアで実施された品種改良や肥料などの技術の移転、栽培技術の適用によって基本的に可能であり、すでに成果を上げている地域もある、(2)メイズの緑の革命は新しい生産システムを打ち立てることによって可能だが、米に比べて参考になる事例は少ない、(3)品種や肥料の改良といった点だけでなく、あぜの設置や均平化、適切な時期の田植え、苗をまっすぐ植えるなどいった栽培技術を身に付けていくことが、サブサハラ・アフリカの緑の革命のカギとなる。特に、研修により、適切な栽培技術を身に付ける重要性が強調されています。

大塚教授とLarson氏は、米について、アフリカで最も重要な主要生産物というわけではないが、その重要性は増してきており、米の緑の革命の成功は、他の食用作物による緑の革命を起こすうえでも手本となり得る、と指摘しています。また、農村の貧困層は、世界的にはここ数十年で減っている一方、サブサハラ・アフリカでは増加していると指摘。このことから、アフリカでも緑の革命がどうしても必要であり、小規模農家を巻き込むことが重要であると述べています。

本書は、2人の編著者による序章「なぜアフリカの緑の革命は必要なのか、なぜ小規模農家を巻き込む必要があるのか」に続き、モザンビーク、タンザニア、ウガンダ、ガーナ北部、セネガルの米、ケニア高原とウガンダのメイズの事例研究を紹介しています。最終章では、「サブサハラ・アフリカでの緑の革命に向けての戦略」と題し、緑の革命に向けて必要な取り組みについて、提言をまとめています。

編者
大塚 啓二郎、 Donald F. Larson
発行年月
2016年1月
出版社
Springer
言語
英語
ページ
195ページ
関連地域
  • #アフリカ
開発課題
  • #農業開発・農村開発
  • #貧困層支援・格差是正
研究領域
経済成長と貧困削減
ISBN
9784431556923 (paper)
9784431556930 (ebook)
研究プロジェクト