『苦難を乗り越えて、 国づくり・人づくり 東ティモール大学工学部の挑戦』

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『苦難を乗り越えて、 国づくり・人づくり 東ティモール大学工学部の挑戦』

21世紀最初の独立国である東ティモールは、インドネシアからの独立を巡る紛争や混乱によって、教育施設を含むインフラの7割が破壊されました。また、エリート層のインドネシア人は国外に脱出。人、もの、システム、全てを失った中、2000年に新しい国づくりを担う人材の養成機関として設立されたのが、東ティモール国立大学です。

JICAは、同大学の工学部に対して、大学設立直後から約20年にわたって教育能力向上を支援する協力を続けてきました。本書は、現地で、あるいは日本国内でこの協力に携わった4人の日本人が綴った、人づくりを通じて新しい国づくりを目指す東ティモールの人々と、そこに情熱を注いだ日本人のヒューマンストーリーです。

著者たちは、現場の教官や学生の学力不足、劣悪な教育環境をはじめ、東ティモール国内の内紛による支援の中断、日本国内の支援大学や支援体制の変更、新型コロナウイルス感染症による活動制限、サイクロンによる洪水など、さまざまな紆余曲折を経験します。しかし、これらの難関を乗り越えて、プロジェクトは、教官の学力や教育・研究能力の向上、修士号・博士号取得者の大幅増加、学部・学科の運営能力向上など、目標をほぼ達成することができました。著者たちは、これを可能にしたのは「人と人のつながり」であったと述べています。そして、このつながりは、時には失敗もしながら、さまざまな機会を経て形成・強化され、その底に流れるのは人としての信頼ではないかと言います。

東ティモール大学工学部は、唯一の国立大学工学部として毎年200人の卒業生を輩出し、高度技術者が求められる政府機関、公共事業省や電力公社などで働く卒業生も増えています。また、同大学工学部の副学部長を務めたり、学部長の候補に挙げられたりする卒業生も現れています。

著者たちは「今後、こうした人材が国の最高学府の一員として、国の将来を担う人材を輩出していってくれるだろう」と大いなる期待を寄せる一方、それはまだ道半ばであるとも認識。「国家百年の計」と言われるように、変化する国内外の情勢をにらみながら、常に高みを目指して努力をしていくことが求められるとし、東ティモール大学工学部によるさらなる取り組みへの提言も行っています。

著者
風間 秀彦、 吉田 弘樹、 髙橋 敦、 小西 伸幸
発行年月
2023年3月
出版社
佐伯コミュニケーションズ
言語
日本語
ページ
206ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #教育
ISBN
978-4-910089-30-0