JICA緒方研究所

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No.130 Normative Framing of Development Cooperation: Japanese Bilateral Aid between the DAC and Southern Donors

援助のあるべき姿に関する理念や判断基準(援助規範)は長らく西側先進諸国、なかんずくDAC主導のもとで形成されてきた。しかし、中国やインドをはじめとする新興国援助の台頭に伴い、DAC援助規範とは異なる「南南協力の援助規範」が注目されるようになっている。

本稿は、日本がDACの一員でありながら、独自の援助規範を形成し維持してきた事実に注目し、DAC援助規範および「南南協力の援助規範」と比較しながらその特徴を明らかにした。日本は、援助を富める者の道義的義務とみなす立場(援助=慈善観)から援助のあるべき姿を規定するDAC援助規範とは異なり、援助を対等な者の互恵的協力関係とみなす立場(援助=協力観)から独自の援助規範を形成・維持してきている。具体的には、人材育成支援や借款を通じた被援助国の自助努力支援を重視すること、日本企業との緊密な連携のもとで援助・貿易・投資の「三位一体」を重視することなどが挙げられる。

援助を慈善ではなく協力とみなし、互恵平等や自助努力を重視する日本の援助規範は中国をはじめとする「南南協力の援助規範」と類似するが、自国を途上国とみなす中国やインド等とは異なり、日本は援助供与開始当初から一貫して自国を先進国と位置付けている点が決定的に異なる。

日本は、DAC規範が重視する民主主義や人権、法の支配等の「普遍的理念」を取り入れつつも、上記のような独自の援助理念を一貫して維持してきた。そして、そうした日本独自の援助規範は、日本を取り巻く国際環境と国際社会における日本のアイデンティティの変化に応じて形成されてきた。「南南協力の援助規範」の台頭に伴ってDAC主導の援助規範が相対化されつつある昨今、両者のいずれにも属さない日本独自の援助理念は、より注目を浴びてしかるべきである。

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